第3話 広島②
さて、少し情報仕入れたいな。
ごめんな…… と思いながら側で亡くなっている人の持ち物から、スマホを拾い上げる。
駄目だ、ロック掛かってる。
次の人のスマホを触る。
これも駄目だ。
3台目で漸くロックしてないスマホに巡り合えた。
ネットに接続して、情報を見る。
世界中で、謎の洞窟が現れUMAによる被害多発。
不要不急な外出を控えて下さい。
とトップページに表示されるが、詳細な記事は掲載されていない。
既にここまでで見付けたモンスターは30匹程を倒して来たが、レベルアップ何て言う声は聞こえないし、システムとしては無いんだろうな。
種族って言うか、種類は全てグレーウルフだった。
だが、俺は明らかに異常なほどに強化されている。
一体何が起きたんだ。
生き残った人は何処にいるんだろ?
営業中のデパートだしこの建物の中だけでも1000人以上は居た筈だよな?
ここまで降りてくる間に、300人程の死体は見かけてるけど、まだどこかに隠れてる筈だ。
でも、トランスフォームした状態だと人が居ても絶対出てこないだろうから、この姿で探すしかないな。
それなら、武器になりそうな物を持ってないと、少しヤバいか。
でも今の俺の身体能力だと、武器なんか使うより素手の方が強いかな?
まぁそれは後回しにしよう。
2階まで降りると、叫び声と争うような音が聞こえて来た。
恐らく1階だ。
1階に降りると大勢の人が居た。
グレーウルフもかなりの数が見受けられ、必死で戦ってる様子だ。
明らかに死んでいる人もかなりの数が居る。
しかし、臭いな。
内臓からなのか失禁した人たちが多いのか、糞尿のにおいが立ち込めている。
その中で、戦える人は必死で戦ってるが、普通の人がこいつらに勝つことは、難しいみたいだ。
どうする?
俺がもし出て行ってこの人たちを助けたとして、それからどうするんだ?
ここから出れたとしても、外にはもっと沢山のモンスターが居るだけだ。
きっと、結局はみんなやられる。
みんな喰われる。
だからと言って俺一人で守り続ける事なんか不可能だろう。
俺は……
俺だってバレなきゃいいか?
と思った。
それなら恥はかき捨てだ。
今収納に収めた物の中から、一つの布を取り出し頭からかぶった。
そう、女性用のパンティだ。
なかなか、心が
だがこれ1枚ではまだ見える部分が多い。
視界だけ確保できればいいからもう1枚の布を取り出し露出部分を減らすために頭の周りに巻いた。
そう、ブラジャーだ。
カップの感触が心地よい。
着ている服は此処の売り場でいただいた物だし、恰好から俺だとバレる可能性は無いだろう。
俺は、1階に下りて行き、恐怖に震える人々をかき分けて、グレーウルフたちが群がって居る場所へ行き、片っ端からグレーウルフの顔を殴り、首をへし折って倒し始めた。
俺はグレーウルフを倒しながら、「外へつながる通路を全部閉める事は出来ますか?」と誰にともなく声を上げた。
警備員のような格好をした年配の男性が、閉店時に閉めるシャッターを全部降ろせば可能です」と答えた。
「ここは俺が何とかします。今は上の階の敵は目につく限り倒したので、動ける人は上に避難してください。警備員さんはすぐにシャッターを全部降ろしてください」
「わ、解りました」
動ける人達が、一斉に既に止まっているエスカレーターを、駆け上がり始めた。
そして、この階に残るのは怪我をして動けない人たちと、大量の死体。
俺はグレーウルフをどんどん倒す。
倒したグレーウルフはみんな光へ変わって消えていく。
と言うよりは、倒した俺に吸い込まれていく。
100匹程の、ウルフを倒した時に声が聞こえた。
『トランスフォーム、グレーウルフ☆☆がブラックウルフ☆☆☆に種族進化しました』と……
エンシェントドラゴンに比べたら、十分に雑魚過ぎるし、あんまり嬉しくは無いが悪い事ではないだろう。
シャッターが閉まり始めた。
恐らくシャッター専用の非常電源でもあるんだろうな。
警備員さんが戻って来た。
「上に上がれる階段は此処以外は何か所かあるんですか?」
と尋ねた。
「非常扉の外にしか無いから、今はこのエスカレーターの上り下りの2つだけしか使えません」
「解りました。辛いと思いますが、死体で片方のエスカレーターを塞ぐので手伝ってください」
「俺はウルフ達を次々と倒しながら、警備員さんに声をかける」
2階から悲鳴が聞こえた。
「しまった反対側から登られたか」
だが、俺の身体は一つだし、どうしようもないこの階にいる後50頭ほどのグレーウルフを倒すまでは上に上がっても同じ事だ。
モンスター達は俺の強さを感じとるなんて言う事は出来ない様で、ただそこに獲物が居るから襲って来る。
と言う単純な行動原理の様だ。
歩けば勝手に噛みついて来る。
俺はそれを殺し続ける。
15分程でこのフロアにグレーウルフは居なくなった。
地下フロアもあるようだが、そっちは既にシャッターが下りていて、今は気にする必要もないだろう。
警備員さんは、血まみれになりながら、片側のエスカレーターを封鎖するために、頑張ってくれたがもうへとへとにへばっている。
まだ死んではいないが、自力で動く事が困難な人も20人ほど残っているが、治療手段も無い俺には、どうする事も出来ない。
俺は警備員さんと共に、2階へと上がっていた。
「あの……質問をしても?」
「あ、聞きたい事は解ります。ですが……この力を手に入れた方法は教える事は出来ません」
「いえ…… 何故女性用下着を顔に纏っているんですか? 中々恥ずかしくてまねできない姿ですよ?」
「フッ……
「それは無理だろ?」
いきなりため口になった。
まぁ気にしない。
2階へ上がると3匹ほどのグレーウルフが上がって来ていて、倒れた人を貪っていたが、新たな生きた獲物である俺を見ると襲い掛かって来たので、倒した。
もうこのフロアにも生存者は残って無いかな?
結局一番上の階まで上がって行き、屋上へと出ると生き残った人たちが集まっていた。
口々に俺に何かを喚き散らしているが、支離滅裂過ぎて意味わからないから
「取り敢えず助けて貰った感謝も言えない奴らにかかわる積りも無い」
そう告げて、階下へと降りた。
「運が良ければ生き延びる事も出来るだろ?」
救出のヘリでも来ればどうにかして貰える筈だ。
取り敢えず1階まで戻った。
息のあった人達も殆どが亡くなっていた。
だが、一人の声が俺を呼び止めた。
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