紅い月なのじゃ


「寝苦しいのぅ」

 蚊帳から出て、庭先から夜空を見たのじゃ。

 暗雲が風で吹き散らされ、隙間から月が顔を出した所じゃった。

「満月なのじゃ。今日はやけに紅みがかっておるのう」

 何かの凶兆じゃなければ良いのじゃが。


 しばらく見ていると、眼に浮かんだ文字に赤みが差してズキンと痛んだのじゃ。

 目を背けていそいそと寝床へ戻る。


 寝っ転がって溜息を吐くのじゃ。

 呪いのようなものじゃな。

 わらわは弟子にこの力も継承してもらいたいのじゃろうか。

 いや、それはない。苦労の方が多いではないか。

 例えこの力を欲したとしても手に入れようがない。詮無きことじゃ。


http://gineiroku.web.fc2.com/deshi.html



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