特別編 十二人のサムライたち
記念すべき第10回のAパートです!
(※1)「しょぼん…」
むかーしむかし、あるところに。アメリ・シンデレ・ラッシュという一生懸命働いていた少女、通称シンデレラがおりました。しかし継母と義姉にいじめられ、今日も舞踏会なのに悲しくもお留守番。
顔も顔文字の「(´・ω・`)」になっていました。
「お困りのようだね」
そんな彼女の元に現れたのはーー。
「
「魔法使いだよ!! 『ま』しか合ってない!!」
福沢諭吉似の魔法使い、スー・ユケでした。
「かわいそうなシンデレラ。顔も『(´・ω・`)』になっちゃって」
「『ぴえん』の顔もできますよ。🥺」
「別にしなくていいから」
でも大丈夫、と魔法使いスー・ユケ。
「私の魔法で、君を舞踏会に連れて行ってあげよう」
そう言って、魔法使いスー・ユケは持っていた杖を振りかざし、叫んだ。
(※2)「特盛卵付きネギ大量玉ねぎなし!」
「それが呪文なんですか!?」
するとなんということでしょう!
シンデレラは瞬く間に、ドレス姿に変わったのです!
そのドレスは溶き卵のように黄色く、リボンやフリルは長ネギのような緑であしらわれていました。
「な、なんておいし……素敵なドレス……!」
足元には、煮込んだ大根のように透明なガラスの靴が。
「でも、ここから城は遠いです。きっと裾を汚してしまいます」
「大丈夫、足も用意するよ」
ところで、と魔法使いスー・ユケは言いました。
(※3)「うちのひいじいちゃんは蒸気船乗りでね」
「突然なんです???」
「物語的にはカボチャの馬車なんだけど、折角だから蒸気船用意したよ」
そう言って用意されたのは、
某遊園地の蒸気船でした。
「ウォルターでイライアスなリゾートから拝借して来たんだ」
「あの……これ、こと細やかに書くと作者のアカウント自体が消されません……?」
「だいじょーぶだいじょーぶ、どこかの姑の趣味もそうだった!」
「その姑さん、今の趣味はラップなんですけど」
彼女の言葉を無視するように、魔法使い・スー・ユケはゴリ押しします。
「さ、舞踏会に行ってらっしゃーーーーい! あ、十二時には魔法がとけるから、ポロリの前に帰っておいで~。運営さんに怒られるからね~」
「そんな不良品押し付けんなー!」
「消費者センターに訴えてやるーー!!」シンデレラの魂の叫びは、ポー! という蒸気船の音でかき消されました。
というわけで、シンデレラは蒸気船で城に向かったのでした。
▪
その頃、ゲートリバー・ツー・ファーダム王子は、華やかな舞踏会を眺めながらため息をついていました。
「どうしたんだい、ファーダム」
「ああ、リトルブラザー」
実はな、と、ファーダム王子は隣国の王子であり友人のナッシング・ムーン・リトルブラザーに打ちあけました。
「最近、夢を見るんだ……アトランティス大陸に行く夢を」
「おお……」
「そしたら、俺は天才科学者で、女優の幼なじみと極道な親友がいた気がして……!」
「気のせいだよ、間違いなく」
(※4)「寝ても覚めてもアレが気になって眠れない!」
「どうりで君の目は充血してるんだね……」
シャンデリアが輝く広間。
美しい姫君たちから踊りに誘われるも、ファーダム王子はすげなく断るばかり。
「そうだ、アトランティスに行こう!」
「どこに行くにしてもアポはとりなさい」
「そういうリトルブラザーこそ冒険する気は無いのか! ひょっとしたらそこには東京にもシチリア島にもないシシリアンライスがあるかもしれないんだぞ!」
(※5)「え、シシリアンライスって、東京にもシチリア島にも無いの?」
どこかツッコミがずれているリトルブラザー。
その時!
「きゃああああ! この船止まらないぃぃぃ!」
シンデレラの蒸気船が、広間にぶつかるという悲劇が起こってしまったのです!
破壊されるパーティ会場に、その場は騒然とします。
ようやく止まった船は、様々なものを巻き込みつつも壊れていませんでした。怪我人もいませんでした。
「な、何だ!? このカ・クーカイ・シマヅ国と知っての狼藉か!?」
誰もがシンデレラに敵意を持つ中、「あれは!」と宰相が声を上げました。
「知っているのか、リチャード・スリー・ヘビーJr!」
「はい王子! あれはこの国の建国者、初代の王『ホース・ボーン』が無名の若者だった頃に福沢諭吉・勝海舟と共に乗った蒸気船でございます!」
え、トウェイン印の船じゃないの?
「なに!? 我が先祖の船が、何故このような場所に現れたのだ!?」
「わ、わかりません……とにかく、あの船の操縦者を捕まえなければ!」
どうしよう!
蒸気船の物陰に隠れて聞いていたシンデレラは、焦りました。
ともかく、ここから逃げなくてはなりません。
ところが、ファーダム王子は驚きの行動に出ました。
何と騒ぎのうちに、船に乗り込んだのです!
いつの間にか隣にいたファーダム王子に、シンデレラは戸惑いました。
「!?」
「しっ、騒がれたくなかったら言う通りにしろ」
このまま船を出すんだ、とファーダム王子は言います。
「そして目指すのだ、アトランティス大陸を!」
「あ、アトランティス?」
意味がわからないシンデレラでしたが、ともかくここを離れたい一心で船を動かします。
遠ざかる半壊した会場。煌びやかな世界は、夜の闇に飲み込まれていき、シンデレラとファーダム王子は二人で国を出発しました。
「ところで……なぜか牛丼が食べたくなるような娘、お前の名前はなんという?」
「わ、私は……」
ファーダム王子に尋ねられて、シンデレラは久しぶりにフルネームを名乗りました。
「カーン・リン・サークル号の
~Bパートへ続く~
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