ネコ原付

 いつも猫の影が見えていた場所があった。

 ゴミ集積所のとなりを通ると

「黒い猫が、視界の端にいる!」

 そう感じてそこを振り向くと、黒い原付があり

「猫じゃないじゃん」

 となる。

 その、黒い原付が猫に見えることが、何回も何回もあった。そこを通るとき1/6くらいで起こっていたように思う(けど実際はもっと少ないだろう)。

 そしてつい最近また、その視界の端の黒いものが見えたとき、

「猫みたいだけど原付なんだよね」

 と思いながら見ると、なんとそこに黒い猫がいた。

 本物の猫が。

 原付だと思っているとき猫に見え、猫だと思うと原付に見える、そういうモンスターなのはもはや間違いない。

 これによると、影がよぎった瞬間に、「原付の正面が猫の顔になっている」のではないかと考えることにより、「猫の胴体の正面部が原付になっているモンスター」を見ることができるだろうと思われる。

 しかしそういうことが起こったためしがないのは、原付の正面が猫の顔になっているのではないかと考えるのが、実はほぼ不可能だからだろう。

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