その他の話

古歌良街

同窓会

 FF3で「こうげきかいすう=手の動きの速さ」ってネタがあったけど、あの「10かいヒット」の文字列と同時に剣でズバババババっていうアニメーションの演出はかなりいいものだった。FF4のDSのリメイク版では、剣で一回だけ斬るアニメーションで、しかも変な音としかいいようがないSE。まあポリゴンのセシルがエクスカリバーでモンハンの乱舞の動きをしてたらおかしいけど。


 FF3が世界最高のRPGだったころ(FF5やFF7がまだ存在しないころ)に小学生は「16かいヒット」とかマネ(?)したし。

 それで文房具とか持って俺の頭をガンガン叩いて「10かいヒット」とかいう。単純にアクションとSEが面白いし、シンプル極まりない文字列も面白い。ひどいときには5分休み中に延々殴り続けて「100かいヒット」とかいってはしゃぐし。

 ていうかひどいな100かいシタジキの角で殴るとか。一番ひどかったのは、首を両手でつかんで絞めてきて俺が涙を流してゴホゴホッとせきこむ(漫画でよくある描写そのままの)をしているのを見て笑ってたのもひどいしペンチで本気で金玉を潰そうとしてきたのもひどいし3階(ベランダは無い)の窓の外に締め出したりしてきたののどれかとかではなく、それら全部と、それ以外の全部の両方だった。俺にとってのそいつの存在そのものが一番ひどかった。

 そういういじめが日常的にある中で、担任の先生の目の前で勇気を出してうったえてみたら苦笑という風だけでその場が終わり絶望したけど、そのことはもうしょうがなかったんだと思える。その担任は自分の子供には絶対テレビゲームをやらせないと言っていたから一週間に一時間だけのテレビゲームが人生の全ての俺のような生徒はよくない生徒だと無意識に思っていたかもとかそういうこともどうでもいい。

 とにかく先生とかまわりとかもひどくても、そいつが一番ひどかった。

 まあどうでもいいんだけど。今となっては。今でもたまに思い出すこと以外はどうということもないし、自分がすごくバカで、まわりは俺よりもややあたまのいいバカだっただけで、「今」は会うこともないし、たとえば担任の先生がそれを反省してほしいというほどのことじゃあない。

 思い出したとき本当にどうでもいいと思えるからどうでもいい。これはなかなか運が良かった。

 なぜそう思えるのかをうまく言えないが、たとえばこの場合、担任の先生も含めてみんなバカだったことが明らかなんじゃないだろうか。その中で、俺が飛びぬけてバカだった。俺は物凄いバカだったが、まわりもなかなかのバカ。

 それでみんながバカだから、バカみたいな状況なのはしかたない。

 そこをもし完璧な(バカじゃない)先生が解決してたら、今になっても重度のバカな俺を含めてこの世の生き物みんながバカだとは気付かなかったかもしれない。

 今から何年か前の、小学校卒業後20年ってところで同窓会に行ったときには、本当に行ってよかったと思った。

 あの「100かいヒット」ってやってきた最低最悪なやつは、やっぱりうだつのあがらないバカみたいなやつだったけど、会った瞬間にはおたがい小学生の教室や休み時間の空気を吸ったような気分だったに違いなくて、おたがい本当に「会えてよかったよー」っていう満面の笑みだったんじゃないかと思う。

 その場でそいつを1000かい殴って金玉を潰して同窓会場の窓から投げ捨ててやった。首を絞めるのはやりわすれたけど。

 いやマジで同窓会行ってよかった。

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