猫と私の365日

@aqua_m_

プロローグ 1年先の

未来は

 自分の人生の終わりを知りながら生きていくのと、知らずに生きていくのはどちらの方が有意義な時間を過ごすのだろうか。人はだれしも限りがあるとその時間に向かってひたむきになれると、小学二年生の時担任の先生は言った。だけど本当にそうだろうか。人は有限であるはずの人生に無限を錯覚して寄り道や回り道を通っていく事がある。だけどそのどれもが無駄だったわけではないだろう。そこから得られるものだってあるのだという事を知ったのはそれから何十年も後の事だ。


 社会人一年目の生活は思っていた以上に大変だった。覚えることは多く今まで以上の人との関わりに、気が付いたら部屋に帰ってベットで寝ていた、という事も多かった。だけど人間の怖いものでそんな忙しさもふと気が付くと、慣れて自己流で仕事をこなすようになっていく。そしていつの間にか過ぎ去っていった十二ヵ月の月日が経つと、今度は自分が右も左もわからない一年目の社会人に指導をするという立場に立つことになる。

 社交的ではない自分には恵まれた同僚のおかげで上下ともに仕事終わりにも話せるような人物が出来た。


 自分の人生は平凡だけれど、それでも小さな幸せと楽しみで溢れていた。だから少しもこの先の人生の事を深く考える時間なんて作らなかった。

 そのつけが回ってきたのだろうと思うしかなかった。


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