第四話 カイルの独白④

 本当に、ハルカと俺は正反対だった。

 肉親を殺されたのに、ハルカはどうして前を向いて進んでいけるのだろうか? と、常に疑問があった。そして同時に、その姿が眩しすぎて、俺の方が黒の魔法使いの気分になった。

 ハルカは黒なのに、温かな光を与えてくれる、そんな不思議な存在だった。


 けれどハルカは、妹にも似ていた。

 戦えないところが本当にそっくりで、妹と……、オリビアと重ねて見てしまった。

 だからこそ、今ある命を大切にしてほしいと願った。


 そしてこの時聞き出せた、ハルカの願い。


 俺とは住む世界が違う人間なんだと、少し寂しくも感じた。それと同時に、自分と共に過ごす間は、その願いを叶える手助けをしようとも、本気で思った。


 ハルカには笑顔が1番似合う。

 だから幸せになってほしい。


 そんな馬鹿げた願いを抱いた自分を、嘲笑した。


 でも本当は……、出来る事ならずっとハルカの側で、俺の心を温めてくれる笑顔を、見ていたいだけだったのかもしれない。


 だがこの時の俺は、これ以上一緒にいたら目的を見失うと危惧した。

 俺の願いが少しでも揺らぐ事は、許されないのだから。



 早くハルカだけの魔法を見つけさせ、切り捨てなくてはいけないと思う反面、ハルカがふらふらとどこかへ消えてしまいそうで、離れるのが怖くもなっていた。

 なんであそこまで自信満々に、道を間違えるのだろうか?


 驚くほど昔と変わっていない。


 昔と? なんだ……、今のは?


 俺は……、罪悪感から頭がおかしくなってきたのか?


 この時、その考えが浮かぶと同時に、本当にそうなのかもしれないと思ったんだ。何故ならハルカが、他の奴らに女として構われる事に対して言いようない感情が俺を支配しようとしていたからだ。


 そして、その感情が苛立ちだとわかったのが、アルーシャとの関わり合いだった。

 確かにアルーシャは女に人気がある。けれども、ハルカの心まで動かされるのは不快だった。

 そして、子供じみた真似をしている自分に更に怒りが湧いた。


 俺はいったい、何がしたいんだ?


 そう自身に問いかけるも、持て余す気持ちをどうすればいいのかわからないまま、俺はハルカの魔法探しの相手をしたんだ。


 ここで俺は、はっきりとした気持ちに気付いてしまった。


 そんな顔は見たくはない。

 いつもの笑顔が見たい。

 俺が、ハルカを笑顔にしたい。


 黒の魔法使いの真実を伝えている最中、ハルカの表情が消えていくのが怖かった。

 だからはっきりと浮かんだ想いを込めて、ハルカを信じ続けると伝えた。


 例えこの先そばにいなくとも、ハルカの幸せの為だけに俺の命を使おうと、きっとこの時に決めていたのだろう。


 そしてこの決意は、今を生きる俺に、初めて意味を持たせてくれた気がした。

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