第二話 カイルの独白②
草原の中で告げられたハルカの言葉を聞いて、戸惑った。
これは頭のいかれた黒の魔法使いだ、と思ってしまった。
だが、この話が本当なら……、俺は『あの日』から初めて神に感謝する事になる、と考えたんだ。
ハルカは奴らをおびき寄せる為の『いい餌』になる。
クロムも行方を追ってくれているが、居場所がすぐにわからなくなる、神出鬼没の奴らだ。だが、探し求めているであろう異世界の情報、ましてやその人間事態の存在を知ったら、すぐに動き出すはずだ。
けれど、ただの頭のいかれた黒の魔法使いなら、何が目的か聞き出すしかない。きっとここにいる理由は、奴らと繋がっている気がする。
どちらにせよ、ようやく俺の願いが現実になるような気がした。
だからこそ、逃げられないように慎重に行動した。丁寧に、客人をもてなすように、俺の行動が疑われないように、ただそれだけを考えていた。
それなのに、ハルカがあまりにも無防備に俺を見つめて、優しく手に触れてきたから、心に隙ができたんだ。
『こんなに簡単に人を信じる彼女を、本当に利用するのか?』なんて、馬鹿げた問いかけを自分自身にされ、何とも言えない気持ちになった。
それと同時に、ハルカの手の温もりが、何故だかひどく懐かしくも感じていた。
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