第三章

第一話 カイルの独白①

 初めてハルカの姿を見つけた時は、とても驚いたのを覚えている。

 人影なんてなかったはずの草原に、突然現れたように見えた彼女の姿。当然、空からでも目が釘付けになった。

 一瞬、乱暴でもされた女が捨てられているのか、とも思った。けれど、そんな考えが霞むほど、俺は焦燥感に駆られていたんだ。


 心臓がおかしな程脈打つのを感じながら、草原へ降り立った。

 けれど、ハルカは必死に何かを探しているようで、こちらに気付く事はなかった。



 早く、顔が見たい。

 早く、声が聴きたい。

 早く……、君を抱き寄せてしまいたい。



 自分の中で知らない感情が芽生えるのを感じながら、はやる気持ちを抑えて声をかけた。


 そしてようやくハルカと目が合った瞬間、先程までの熱に浮かされたような感覚が、すっと消えるのがわかった。



 あれが一体なんだったのか、今でもわからない。



 それでも胸に残ったものは、穏やかで懐かしいような、追慕の念だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る