第9話 異世界ってこんな世界なの!?

 あの女性達はよく仕事の依頼をしてくる人達だそうで、それ以上の事をカイルも知らないそうだ。

 2人で質問の意図を考えていたのだが、一向に話が進まないので考えるのをやめる事にした。


「なんだかよくわからなったな。とりあえずもう少し歩くぞ」

「そうだね……。それじゃついて行くね」

「あぁ。珍しくて気になるものもあるだろうが、あんまり離れて歩くなよ?」


 そう注意してきたカイルと共にゆっくりと歩き出す。

 そしてはるかはまた周りを見回した時、気付いてしまった。


 なんだか……見た目が日本人っぽい人ばかりじゃない?

 たまたま、かな?


 そう考えて更に人々を観察してみた。


 …………見間違いじゃない!

 えっ?

 なんで?

 異世界って金髪碧眼とかの容姿端麗の人達ばかりのイメージがあったけど、この世界は違うの?


 異世界ってこんな世界なの!?


 容姿に対して少しばかり夢を見ていたはるかはそんな失礼な事を考えながらも、その原因を探った。


 顔つきはよく見たら違う……って当たり前か。

 なんで日本人に見えるんだろう?

 うーん……顔のほりの深さとか、髪の色?


 よく見るとほりの深い顔の人はあまりいない。

 それだけでも日本人に近い容姿に見える。

 それにカイルのように黒っぽい緑色の髪色の人もいれば、黒っぽい赤のような髪色の人もいる。


 はっきりと緑とか赤ではないのが原因なのかな?

 それにしても真っ黒とか金色の髪の毛の人も全然いないなぁ。


 そんな事を考えながら必死に金髪碧眼の人を探していたら、カイルから声をかけられた。


「何を探しているんだ? 何かあるなら教えてくれ」


 不思議そうな顔をしているカイルを目にして、はるかは一瞬で申し訳なくなった。


 見た目を勝手に期待して、勝手に落ち込んでいたなんて身勝手すぎるよね……。


 そう思ったはるかは今考えていた事は言わずに町の感想を伝えた。


「町並みが可愛い色合いでついつい見ちゃってたんだ。あとさ、可愛い生き物もたくさんいるんだね!」

「優しい色合いで町が作られているからそう見えるのかもな。そうか、生き物か……。だけど、もっと必死に何かを探していなかったか?」


 上手くごまかせたと思っていたはるかはぎくりとした。


 日本にいた時の私なら気付かれない自信があった。

 表情に出さずに人の顔色ばかりを伺って過ごしていた自分はそういう事がしんどくも、得意としていたと思う。

 なのに異世界に来てからそんな事考える余裕がなくて、顔に出ちゃってたのかな?

 カイルが自然体に見えるから私もつられているのかも……。


 そう考えてはるかは決心した。


 きっと下手に隠してもいつかはボロが出てしまう。

 それならきちんと話してみよう。

 内容は……しょうもない事だけど。


「あのね、その必死な件は……後でもいい?」


 さすがに外でみんな日本人に見える! なんて言えるわけもないので約束だけしておいた。


「俺はいつでもいい。好きな時に話してくれ」

「ありがとう。あとね……聞いても怒らないって約束してくれる?」


 そんな下らない事考えるなんて失礼だ! と言われそうだったのではるかなりに先手を打ってみた。


「また変な事でも考えていたのか? どんな話が聞けるのか楽しみにしておくな」


 軽く笑いながらそう言われて、はるかは少しふて腐れながら返事をする。


「別にそんな変な事、考えてないし。さっきとは違う事だし」


 その返事が面白かったみたいでカイルは小さな笑い声を漏らしていた。


「そうかそうか。俺はさっきの事も今の事もわからないから何も想像はできないけれどな」


 笑いながらそう言われ、はるかは自ら墓穴を掘った事に気付く。

 そして続けてカイルは話しかけてきた。


「さて、それじゃ宿でゆっくり聞かせてもらうかな。あれが俺の泊まっている宿だ」


 そう言ってカイルが指差す方向を見ると、ふかふかの食パンのような大きな建物が見えた。


「なんだか可愛らしい宿だね!」

「見た目は可愛いかもしれないが、値段はそこまで可愛くはない。それでもここは人気で、特に料理が上手いんだ」


 その説明をするカイルの顔は心からそう思っているような笑顔だったので、はるかも期待が高まった。


「さぁ、とりあえず中に入ろう」


 話しているうちにたどり着いた宿を目の前にして、カイルはとても自然にはるかの手を引いて中へと案内をしてくれた。


 その行動にどきりとしながらも、宿に対して期待が膨らむはるかは心躍らせながらついて行った。

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