ホラー小説SS
猫蕎麦
第1話 見間違い
私ね、よく見間違いをするんですよ。猫だと思って近寄ったらコンビニのレジ袋だったり、お金が落ちていると思って拾ったらプルタブの潰れたやつだったりなんてのは日常茶飯事なんですよ。
…え?今その話は関係ないって?まあまあ聞いてくださいよ。
でね、その中でも、よく見間違いをしちゃうのが人なんです。電信柱の下に人が立ってると思ったらただの影だったり、家の前に誰か立ってるって思ったら木だったり。車に乗ることが多いので、通りがかりに一瞬目の端に映るだけなので、結構怖いんですよ。で、信号が赤で止まった時とか、後続車がいない時とかにその場所見て、「なーんだ、やっぱり見間違いかあ」って思うんです。
でもね、見間違いだって、そこに人が立ってるはずないって、分かっているのに、そこを通る時はやっぱり見えるんですよ。そこに人が。
しかも、毎回同じ人。怒った顔した男の人とか、髪の長い女の人とか。
だから、私、そのうち、自分には霊感があるんじゃないかなー、なんて思うようになったんですよ。猫とかお金の例は100パーセント見間違いにしても、人が見えるって、しかも居ないって分かっているのに見えるって、これ、立派な一つの力だと思いません?
…あ、霊感とか信じていないタイプですか?言わなくても、顔に書いてあります。「何言ってんだこいつ」って。
まあね、確かに私も、こんなこと言っといてアレですけど、別に自分が物凄い霊能力者だって思っているわけではないんですよ。だって、見えているだけで語りかけても来なかったし、夢に出るとか何か体に異変があるとかいうわけでもなかったので。
でも、今回の一件で信じるしかないかも、って思うようになりました。自分の霊能力を。
だって、実際に、あの髪の長い女の人に接触したんですもん、物理的に。これは信じるしかないかなーって。
…あ、いやいや、酔ってないですって。確かに、少し飲んだかもしれないですけど。
…え?病院?命に別状はない?骨折で入院?いやいや何言ってるんですか、幽霊なんだから命もなにもないですって。
だから、ね、刑事さん。私は人を轢いてなんていませんよ。
私は正常ですよ?視力検査でもしますか?それとも…精神科医を、呼びますか?
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