史上最悪なモンスターに転生した最強者達は恨みを晴らす為に人間種を滅ぼしたい

MIZAWA

第1章 7つのモンスター誕生

第1話 勇者デュラハン誕生


 そこは無数の戦場があった場所のようだ。

 暗闇の中ぶすぶすと沼から這い出てくる鎧の騎士がいた。

 そいつの右手が掴んでいるものは兜に包まれた頭であったのだ。

 首無し騎士は辺りを見渡す。



 ここがどこなのか理解出来ていないようだ。

 首無し騎士は喉が渇いたのか泥水を飲み込む。

 正確には兜の中に入れている。



 首無し騎士はごほごほとむせ返る。

 辺りを見渡しても数えきれない死体が転がっている。

 ほとんどが人間達ばかりでつい最近戦争が起きたようだ。



 ある死体が目に留まった首無し騎士。

 彼は子供の死体をじっと見ていた。

 首無し騎士はようやく思い出してくる。



 彼はそういった犠牲をなくす為に、立ち上がった。

 それはなぜ?


 

 それは沢山の子供達の幸せな顔を見たいから、こんな絶望の瞳をして朽ち果てている死体を見るなど。


 ぶすぶすとまた音が鳴った。

 後ろの沼地から首のない馬がゆっくりとゆっくりと召喚されるように現れる。

 首無し死体はそれを見て相棒だとすぐに理解する。

 だが記憶が混在している。



 今まで地獄みたいな所を彷徨っていたようだ。

 それはこの世界だって地獄と変わらないか。


 右腰には銀色の剣が装備されている。

 頭を左手に持ち変えると、右手で銀色の剣を引き抜く。

 風をも両断出来そうな業物である事は確かだ。


 

 首無し騎士はようやく記憶が戻って来る。

 怒りが暴走するように、沢山の怒りが溢れかえるように空を見る。そこには7つの星が支配している真っ黒な空。


 

 まるで亡霊そのもののようにけたけたと笑いだす首無し騎士、それに呼応するように首無し馬も反応する。


 人間を滅ぼせ、人間を殺せ、人間を駆逐せよ、人間を拷問せよ、人間をバラバラにせよ。

 怒りが頭を支配する。憎悪、復讐が頭をよぎり続ける。 

 自分自身が何の為にこの世界に再び舞い戻ってきたのかを思いだす。


「俺様はエンペラーの1人で勇者だ。そうだ。勇者だった。あの7つの国が裏切り、俺様達を生贄にしたのだろう、仲間だ仲間を探す。いや、彼等もこちらに来ていたら彼等はきっとそうする、そうさ、今いる国を亡ぼすのだ。このデュラハンがなぁああ」


 

 首無し騎士の名前、それはデュラハンであった。

 デュラハンは宙に自らの首を捧げるかのように持ち上げる。



「神に誓って人間どもを滅ぼしてやろう、さぁ、くるのだ。グリー」



 その声にグリーは合図を返してきたのだ。



===勇気の国===


 その国は貴族社会で潤っていた。

 沢山の貴族達は平民を虐げて生活している。

 

 7つの国が結託して新しい大陸を召喚した。 

 その大陸には見た事もない資源とモンスターがいた。

 この勇気の国もその資源の恩恵を授かっている。


 国王は贅沢をして、平民も貴族に虐げられているが贅沢をしている。

 平民も貴族達はある時1人の勇者を見捨てた。

 

 

 勇気の国にいる全ての民がこの国出身のエンペラーである勇者を見殺しにした。

 人々の眼の前で心臓を抉りだしたのだ。


  

 人々はそれを見て笑っていた。

 国王の情報操作で、勇者達が平民のお金を搾取していたという誤報を流されたのだ。

 そんな事を勇者達はつゆ知らず戻ってきたのだから。


 

 この国には奴隷がいないとされる。

 しかし潤った国は裏の商売が流行るものだ。


 

 それは唐突に起きた。沢山の人々が市場で買い物をしたり、子供がきゃっきゃと遊んでいたり。

 兵士達が女性をナンパしたり、売春婦たちは男性を誘惑したり、国王はそのような幸せな国を見ている。



 7人の人間を破滅させた事を彼らは忘れている。

 彼らは魔王を倒し沢山の人々を苦しませる化物達を倒して来た。

 さらに強すぎる彼らの力を利用して心臓を奪った。


 

 そんな事など忘れている。

 今は平和でありまた魔王が現れれば勇者を探せばいいと思っている。


 

 そんな彼等にそいつはやってくる。


 1人の人間の頭がくるくると回転しながら市場に突き刺さった。



 最初人々はなんだろうと興味本位で見ている。

 それが兜の被った兵士の生首だと知ると、人々は悲鳴を上げる。


 

 それは勇気の国の門の所にいた。

 白銀のような鎧を身に着けている巨躯。

 その大きさは勇者であった時の彼の体の大きさと同じだ。


 

 その事に気付くものは誰もいないようだ。

 突然銀色の剣を抜刀したデュラハンは1人の兵士の首を両断。

 その勢いのままぶっ飛んでいく。

 それは城門を乗りえて消えて言った模様。


 

 まず冒険者とか観光客とか兵士達とかが抜刀をしだした。

 観光客は逃げる事に集中しているようだ。


 

 人々は彼が勇者である事を知らない、人々は彼がデュラハンである事を知らない。

 勇者達を騙し討ちで捕らえる事が出来たのは1度で限界だ。2度目は存在しない。



 デュラハンはゆっくりと銀色の剣を構える城門から弓矢が飛来した。兜を貫き頭が地面に落ちた。



「まったく見た目だけって奴だな」

「いや、おかしい、まて」


 

 兵士がほっとしていると冒険者が声をあらげる。

 ここにいる冒険者は10人くらいで、兵士が先程1人殺されているので4人くらいとなっている。


 

 鎧の騎士の首が落ちたのに、なぜか鎧の騎士は倒れる事をしない、そのまままっすぐに歩く。


 

「う、嘘だろおおおお」

「ば、化物おおおおお」

「こっち来るなあああ」

「があああああああ」



「お前達は俺様の慈悲を聞いたか? お前達は仲間達の慈悲を聞いたか?」



 デュラハンは転がっている頭を浮遊させる。

 頭は監視塔の役割となる。

 デュラハンは全身に槍でくし座されようと、弓矢で全身を射られようと、魔法で炸裂されようと、白銀のような鎧に傷がつくくらいであった。

 しかし傷はみるみるうちに修復されていく。


  

 兵士達は冒険者を放って置いて逃げ出した。

 冒険者達は悲鳴を上げながら1人また1人と殺されていく。



 兵士達はこの事を国王に連絡すべく戻る事とした。


 

 その日の国王は息子の剣術の指南をしていた。

 そこに全身がぼろぼろの兵士達が表れると、国王は叫ぶ。



「お前等は皇太子にそのような姿を見せていいのか」

「す、すみません、白銀の鎧の普通のデュラハンじゃない奴が城門で暴れています」

「ないぃ、近衛騎士を呼べ、50人だが1人1人が最強だ」

「は、はい、今すぐ」



 兵士達は腰を抜かした状態で走り出した。


 兵士達が走っている間。城門にいた兵士達をデュラハンが皆殺しにした。

 その異変は即座に生じる。首を両断された死体が1体また1体と立ち上がる。



「これがスキル。これが【眷属】というスキルなのだな」


 眷属スキルとは首を両断するとその死体を操る事が出来るというものだ。

 恐らく浮遊しているデュラハンの頭が司令塔になるのだろう。



 デュラハンとは2つの視線を持っているとされる。

 1つが兜から見られる視線。

 1つが首の所にある瘴気のような物だとか。


 

 デュラハンは歩く、その後ろを約10名の死体が付いてくる。

 それはまさしく首無しゾンビ状態となっている。

 これこそがデュラハンの行進だった。


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