奴隷少女と運び屋

鴨ノ箸

第一章 運び屋編

序章 彼

彼は強くありません。

彼に竜を討伐できる膂力はありません。

彼に魔神を倒せるような信仰心はありません。

彼に魔女の攻撃を耐えられるような耐久力はありません。

彼に魔術は使えません。

彼に魔剣は引き抜けません。

彼に神の御加護が降り注ぐこともありません。

彼に特別なセンスもありません。

彼に世界は救えません。

多くの人を救うこともできません。

彼は勇者ではありません。なることもできません。

しかし、一つだけ。

たった一つだけなら。

彼ができることがあります。彼にしかできないことかもしれません。

それは一人の人間を守り続けること。

たとえ、それが竜と、魔神と、魔女と、世界と戦うことになったとしても。

たった一人の英雄になることくらいしか彼にはできないのだから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る