行間1 今日の昼休み・・・
第6話 ハメられた・・・のかなあ・・・
それは今日の昼休みの事だった・・・
私はいつも通り、食堂のテーブルで同じ2年F組の
「・・・最近の
那津ちゃんはボソッと言って私に視線を合わせてきたけど、顔を見る限りでは他意はなさそうだ。真穂子ちゃんと美琉玖ちゃんも「そういえばー」とか言って、ちょっとだけ上を向きながら
「たしかに言われてみれば、伊奈ちゃん、バイト三昧よねー」
「うーん、バイト漬けで体をぶっ壊さなければいいけどねー」
3人ともニコニコ顔で私を見てるけど、別に私は何も悪い事をしているとも思ってないし、実際、去年の年末までは土曜日と日曜日は両方ともバイトを入れてたのは事実だったし(今はどちらか一方しか入れないようにしてるけどね)、「映画に行こう!」とか「コンサートに行こう!」とか誘われる時に限って、何故かシフトと重なるから丁寧にお断りしてたのも事実ですー。
「・・・でもさあ、本当にバイトならいいけどー、もしかしてカレシとデートしてたりしてねー」
真穂子ちゃんはニヤニヤ顔になって私をジロジロ見てるけど、私、マジで彼氏なんかいません!それどころか彼氏いない歴イコール年齢です!
「・・・あー、たしかに伊奈ちゃんだったらカレシの一人や二人、いてもおかしくないよねー」
「そうだよねー。わたしたちより可愛いしー、しかもお金も持ってるしー」
おいおい、私は別に可愛いとは思ってないし、だいたい『バイトをやっているイコールお金を持っている』とは偏見もいいところです、ぷんぷーん!
「・・・そういえばさあ、
「うっそー!美琉玖、それって、どこで見た?」
「平凡坂の駅のホーム。でも、栗夢お姉ちゃんが電車を降りる時に、ホームで電車を待ってて入れ違いの形になったのをチラッと見ただけだから、あれがホントに伊奈ちゃんだったかは自信ないみたいだけどね」
はあ!?なんだそりゃあ?私が逆に聞きたいぞー・・・あー、もしかして、お姉ちゃんとその彼氏の事かなあ。私、昔からお姉ちゃんとよく間違えられるから、お姉ちゃんが彼氏とデートしているところを目撃されて、それが私だと勘違いされたのかもしれない・・・
「憎いぞ、コノヤロウ!」
「そうだそうだあ!わたしたちにも誰か紹介しろー!」
真穂子ちゃんは肘でグリグリやってくるけど、ホントに私は紹介するような男友達はいないし、だいたい、彼氏だっていませんから勘弁して下さーい!
「・・・そういばさあ、あの1年生、えーと、名前はたしか並野君だったかなあ、あの子、結構可愛い子よねー」
「そういえばー、この前、学校帰りに平凡坂ショッピングモールの
「「うっそー」」
「伊奈ちゃーん、ホントはあの1年生と付き合ってるんじゃあないのー?」
ちょ、ちょっとー、マジで勘弁して下さいよお。たしかに並野君は可愛いけど、たまたまバイト先で教育係を担当してたに過ぎないんです!ホントに彼氏じゃあありませんからー!
「・・・うーん、ムキになって否定するところが逆に怪しいけど、ホントにあの1年生と付き合ってないなら、わたしが貰っても別にいいわよねー」
「あー、佐坂さーん、相手が悪すぎるから諦めた方がいいわよー」
「へっ?ちょ、ちょっと美琉玖!どういう意味!?」
「栗夢お姉ちゃんが言ってたけど、あの1年生、3年D組の
「あれっ?見田目先輩は3年A組の
「それがさあ、矢田羅先輩は2年A組の
「野沢さんもこれで何人目?どれだけの男と遊んでるのかねえ」
「つまり、見田目先輩はあの1年生狙いに切り替えたのね」
「あの1年生、特に3年生から『可愛い』って評判だから、誰が先に落とすのか競争になってるみたいよー」
「くっそー、どうして我が校はいい男が全然いないのよー」
「仕方ないでしょー。うちは平凡坂市内にある4つの高校のうち、底辺高校とまで呼ばれる学校だからさあ」
「はーー、今年の1年生にはロクな男子がいないのに、数少ない可愛い系男子を肉食系の3年生の先輩たちに取られたら、わたしたちに勝ち目は無いわよー」
ふーん、そうなんだー、並野君、先輩たちから人気があるんだあ。
ま、私にはどーでもいい話だけどねー。
「・・・ところで伊奈ちゃん、明日は何か予定があるー?」
へっ?明日?・・・えーとー、今のところはたしかバイトは入れてないけど・・・美琉玖ちゃんの目が怪しく光ってる!これは絶対に何か裏がある!!
「・・・いやー、あのね、うちのお母さんから『明日は塾の公開模試に行け!』って厳命されてるんだけどー、平凡坂駅のエキナカにある伊勢国書店にエッキーが来てサイン会をやるから、代わりに行って欲しいんだよねー」
あー、私もテレビとかで見た事があるけど、お笑い芸人の事かあ。たしか自分の本を出したから、あちこちでPRを兼ねてサイン会をやってるって『お目覚めテレビ』でやってたなあ。でも、何で自分で行かないんだあ?
「いやー、伊奈ちゃんも知ってると思うけど、3月の学年末テストが散々で追試寸前だったでしょ?だからお母さんが激怒しちゃって『塾へ行け!』とか言い出したんだけど、まずは手始めに公開模試へ行って、その結果を見て、本当に塾へ行くのか夏期講習程度でヨシにするか決めるって言ってるから、わたしも嫌とは言えないのよねー。しかもー、栗夢お姉ちゃんに行ってもらおうと思ってたけど、明日は部活があるからダメって速攻拒否されちゃってさあ、正直困ってるのよねー」
あー、ナルホド、可哀そうにねえ。だから代わりに私に伊勢国書店へ行って欲しいって事かあ。まあ、午前中だけなら別にいいけどねー。
「あー、それなら、わたしの分も頼んでいい?」
はあ!?どうして真穂子ちゃんの分まで私がやるのー?2回も並べって、絶対に無理無理!
「いやー、本当は自分で行きたいんだけど、わたしもお父さんが大激怒で美琉玖と同じ公開模試へ行けって厳命されてるのよねー。でもさあ、エッキーのサイン会の予定を調べたら、明日が県内どころかこの近辺でやる最後のサイン会で、残りは北海道と九州しか無いのよねー。だからあ、わたしの分もねー」
ちょ、ちょっと、絶対に2回は無理!たしかどこの会場でも整理券を配布しているくらいだから、2回なんて無理無理!せめて那津が一緒に来てよー。
「あー、ゴメンゴメン、わたし、エッキーに興味がないのよー。それにー、明日はちょっとね、ニヒヒヒヒ・・・」
「あー、お前、絶対に男とどこかへ行くつもりだな!」
「この裏切り者!」
えっ、えっ、となると、私一人で2回サインを貰えって事になるよ!勘弁してよー。
「まあまあ、このお礼はするからさあ」
「マイスドの『リング・デ・ポン』でどう?」
うわっ、私が『リング・デ・ポン』に目が無い事を知っていて無理矢理やらせようとするなんて、卑怯だぞー!と言いたけど、『リング・デ・ポン』だったら断り切れない!くっそー、ハメられた・・・のかなあ・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます