タイソーは何でも100円で販売し…ちょ、ちょっと先輩!これを100円で買えってどういう意味ですかあ?…これって犯罪?新手の詐欺?それとも…
黒猫ポチ
オープニング
第1話 バイト始めました
「
僕は
「・・・えーとー、今日の並野君は初日という事で、
「はい、分かりました!」
「そういう訳だから、河合さん、並野君を頼んだぞ」
店長はそう言って、『かわい』というネームプレートを付けた女の子に声を掛けたけど、その子、河合さんは「わかったわよー」と軽ーい返事をして、これまた軽ーく右手を上げた。
「じゃあ、オレは自分の仕事をするから、後は任せたよー」
そう言うと店長は、僕と河合さんを残してスタコラと部屋を出て行った。
ここは
実は・・・正直に言うが僕はアルバイトという物をやった事が無い!
県立平凡坂高校に入学して半月・・・ゴールデンウィークを目前に控えたある日、僕は父さんと母さんから「高校生になったんだから、
幸か不幸か、面接でアッサリ「いいよー」と言われ、ゴールデンウィークが明けた今日から、基本的に月水金の夕方、それと土曜日もしくは日曜日のどちらかの合わせて週4日、アルバイトする事になって今日が最初の出勤日だ。
学校帰りにタイソーに行くには家の前を必ず通る事になるから、僕は私服で出勤しているが、これは面接の時に既に確認を取っているから問題ない。他のアルバイトやパートの人も、タイソーオリジナルのエプロンの下に着ている服はバラバラなのだから、決して僕が浮いている訳ではないのは百も承知だ。
「じゃあ、始めるわよ!」
こうして僕のアルバイト初日は始まった。
制服代わりに与えられたタイソーオリジナルエプロンには『なみの』という真新しいネームプレートと若葉マークを着けているから、僕の名前を覚えてもらうのに苦労する事は無いだろけど、この女の子、河合さんがやたらとハイテンションだから僕としては逆にやりにくい・・・
「・・・あのー」
「ん?どうしたのー」
「・・・アルバイトって、難しいんですかあ?」
「大丈夫大丈夫!なんてったって、この私がやってる位だから全然大丈夫!!」
河合さーん、テンションだけは異常に高いんですけど、本当に大丈夫なんですかあ?
僕は河合さんと同じように店の棚への品出し、入荷した商品の受け取りと倉庫への搬入などをこなしてるけど、たしかに河合さんの言うとおり、思ってた以上に簡単だ。ただし・・・品数が半端ではない!しかも似たような商品が多い!!これを全部覚えられるかなあ・・・
そんな僕の心配を余所に、河合さんはスマイルスマイル!
僕はただ河合さんの真似をしているだけなのだが・・・こーんな可愛い子と一緒に仕事が出来て幸せです!!
さすがに今日が初日だから「ケーブルコネクターはどこですか?」とか「方眼紙が欲しい!」「マスクはどこですか?」などとお客さんに聞かれても答えられない。河合さんはそのたびに僕の代わりにお客さんに「その商品は5番の列にありますよ」とか「こちらにありますよー」「ついてきて下さい」などと言ってテキパキと対応している!まさに教育係の鏡!!指導係マイスター!!!
という訳で・・・バイト初日の3時間はあっという間に過ぎた。
「・・・おーい、河合さん、それに並野くーん、もう上がっていいわよ」
僕と河合さんは、『まじめに』と書かれた名札のお姉さんに声を掛けられた。
「あれっ?もう8時だったの?」
河合さんは慌てたように店内にあった時計を見たけど、たしかに時計の短い針は8を、長い針は1を指している。つまり、今日のバイト拘束時間は5分前に終わっていたのだ。
「あっきれたー。仕事熱心なのはいいけどサービス残業はナシね」
「
「ちょっとー、わたしのモットーは真面目にキッチリです!」
「ま、さすがキャリア5年は伊達ではないですね。この際だからタイソーに就職したらどうですか?」
「冗談じゃあありません!この真面目似
「はいはい、三流大学生らしい考えですねえ」
「三流大学だろうが一流大学だろうが、公務員試験に受かればいいんです!」
河合さんも真面目似さんも言ってる事はトゲトゲだけど、その内容が嘘みたいに互いにニコニコしながら話している。いつもの挨拶みたいだけど、そんな二人が互いに「お疲れ様でしたー」と言ったところで僕のアルバイト初日は終わった。
「・・・並野君、次のシフトはいつ?」
「あー、僕は明後日。時間は今日と同じ」
「あらー、また私と同じという事は教育係パート2ですかあ?」
河合さんはエプロンを脱ぎながら僕とにこやかに話してたけど、仕事が終わってもハイテンションは全然変わらない。
「それじゃあ、明後日、ここで会いましょう!」
男女別のロッカー室の前で僕と河合さんは軽く右手を上げて別れた。
こうして僕のアルバイト初日は、河合さんの優しい(?)指導の元、無事に終わった・・・
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