第95話 獣人国国王と剣魔サイコ
獣人国国王がソウタ達を見てけて駆け寄ってきた。
「ブリュンヌ!」
「父上! 何故ここに? 御身体は大丈夫なのですか」
ブリュンヌも国王に駆け寄り抱き合う。
「ああ、ブリュンヌが聖者様を連れて来てくれたお陰で、この通り健康そのものだ。聖者様にお礼をしたい、聖者様に紹介してくれないか」
ブリュンヌ、ナナミ、モモカ、サイコ、ジュネはソウタを見る。
ちなみに、リャンゾウはソウタの足元で丸まっていて、ブルはソウタの肩で休んでおり、クロリスは我関せずでソウタの後ろに佇んでいた。
「我は獣人国国王のパンジャだ。我と妻をペストから救っていただき感謝に堪えません。是非、御礼をしたいので、獣人国王都に同行していただけないだろうか?」
国王はブリュンヌを優しく離すとソウタを真っ直ぐに見つめた。
ソウタは無言で国王パンジャをジッと見ている。
(治療したときは寝てたから感じなかったが、こうして見ると流石に迫力あるな)
ちょっとビビってた。
「お前、敵か?」
軽々と大剣を担いだサイコが前に出て国王パンジャに問う。
「ん? いやいや敵ではないぞ。我は聖者様に命を救われた。敵であるはずがない。聖者様に命を救われた御礼をしたくて探していたのだ」
「でも、この人達から獣人国に連行して奴隷にするって言われたのですが、その国の国王が何も知らない筈はないでしょう」
モモカがドグラとマグラの遺体を指差す。
「ドグラとマグラが死んだのか………。此奴らの蛮行を止めるためにも慌てて聖者様達を追って来たのだ。聖者様達にお怪我はありませんでしたか?」
(聖者様達に傷一つない。信じられない。あのドグラとマグラを無傷で倒せるとは……。いや、今はそんな事よりお詫びするべきだ)
国王パンジャは驚くとともに認識を改める。
「不徳の致すところで申し訳ありません。我の知らないところで、このような事を進めた愚か者がいました。愚か者達には罰を与えたが、本当に申し訳ない」
深く頭を下げる国王パンジャ。
「私達は命を救ったのに襲われたのよ。とても信じられないわ」
「だよなぁ。やっぱり敵だよな」
モモカの言葉に便乗し嬉しそうに笑うサイコ。
「ちょっと、まだ判断しちゃダメよ」
ジュネがサイコの袖を掴んでサイコの行動を止めてソウタを見る。
「ん」
サイコは不満顔でソウタをみるが、
「………」
無言のソウタ。
「国王陛下と敵対したいの?」
ナナミがサイコに尋ねると。
「敵対したいよ。豪華な服を着ているから金を持ってそうだ。殺すなら金持ちの方が良いに決まってる」
「うはぁ………」
ナナミは言い返す言葉が見つからない。
「ちょっ、ちょっと待って、父上は恩を仇で返す様な事をする人じゃないわ」
サイコの実力を知るブリュンヌは国王パンジャとサイコの間に入り、慌てて否定する。
「お前も敵か?」
サイコはブリュンヌを睨む。
「そ、そんな………」
後退るブリュンヌ。
「ブリュンヌは私達を助けようとしたの。敵じゃないよね」
ナナミがソウタを見るとみんなもソウタに注目した。
(おいおい、俺に喋らせないでよ。国王も俺をジッと見てるじゃないか、はぁ、緊張してきたよ)
ソウタは辛うじて頷き態度を示した。
ブリュンヌはホッとするが………。
「ほら、お兄ちゃん。やっぱりそうでしょ。ソウタ様が判断する事よ」
「だがなぁ、俺はジュネの命の恩人であるソウタの味方だ。ソウタの敵は俺の敵。ソウタは優し過ぎる、騙されて命を狙われたのだろう。禍根を残せば後々ソウタに災いが降り掛かるぞ。禍根は根絶するに限る。同行者であろうと敵は斬って然るべきだ」
サイコは身構えたまま殺気を放ち、怯えるブリュンヌ。
「申し訳ありませんでしたああああ」
サイコの只ならぬ雰囲気を察知して、急に土下座をした国王パンジャを唖然として眺めるソウタ一行。
サイコは訝しげに国王パンジャを見ていた。
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