第93話 剣魔サイコ

ソウタ達は獣人国の村に着いた。


そこは瓦礫の山とゴーレムの残骸があちらこちらに散らばっていた。


「ここで何があったのかしら?」

「かなり大規模な戦闘があったみたいだな」

ナナミの言葉にソウタが辺りを見回すと。


「お前ら、敵か?」


肌の黒い子供が瓦礫に腰掛けて、自分より大きな大剣を軽く右肩に担いでいた。


「ええええ!!!」


(コイツ、彷徨う裏ボスの剣魔サイコだ! ヤバいヤバいヤバいヤバい………。


国崩し、傍若無人、理不尽ボスなど色々言われていたが、ゲームで出て来た最強最悪な奴。


敵には容赦しない。敵即斬! 盾も鎧も剣も岩も魔法や結界さえも何でも斬り払う。1人で平気で国を壊滅させたりする。


絶対敵対したらヤバい奴だよ。


通常のボスはダンジョンや敵の拠点の決まった場所にいるが、コイツは違う。何処にいるか分からない。いつ会うか分からない。いろんなところを彷徨っているんだ。


会ったら最後、戦えば必ず負ける。ゲームをした人は必ず一回は殺されている。


最終ボスの魔王を倒さなきゃ勝てない裏ボスに、運が悪いとゲームを始めた直後に出会う事もある。そうなったらもうトラウマだよ。


俺も魔王を倒した後は最強の魔剣を手に入れたくて、何度も挑んたんだけど今の時点で勝てる要素が全くない)


「いやいやいやいや、敵じゃない、敵じゃないよ。敵である訳がない!」

ソウタは両手を上げて敵意がない事を身体全体で表す。


「ソイツ、何だか偉そうじゃないか?」

ブリュンヌが近付いてきた。


「ブリュンヌうううう! 武器を出すなよ! 睨むな! 身構えるな! ぜっっったい敵意を表すなよ!」


「ん? あ、ああ、分かったよ。そんなに焦ってどうした」

ブリュンヌが不思議そうにソウタを見ていると、ソウタが必要以上に焦っているのを見て、みんなも集まってきた。


「俺はソウタ。しがない採取士だ」


「ふうん。敵じゃないのか。残念だ。俺はサイコ、剣士だ」


ナナミ、モモカ、クロリスも自己紹介して、リャンゾウとブルも紹介した。


そうこうしていると、ソウタはサイコの周りに散乱する残骸が目についた。


(な、何だ。明らかにボスレベルの魔人の残骸じゃないか)


「ん? コイツか? 何かいきなり襲って来たから周りのゴーレムと一緒に斬ったんだが、強そうな割には所持品がショボくてがっかりしたんだよ」


「ええええ! 明らかにボスの素材でしょ、高く売れると思うよ。周りに散らばってるゴーレムだって普通の岩ゴーレムは一体もいないじゃない。オリハルコンゴーレム、ミスリルゴーレム、アダマンタイトゴーレムなど、信じられないぐらい高く売れると思うけどなぁ」


「そうかも知れないけど、こんなに持って行けないだろ。俺はこれだけでいいから、いるならあげるよ」

サイコはそう言って懐から大きめの魔石を出した。濃厚な禍々しい魔力が溢れる、明らかにボスレベルの魔獣の魔石。


「いやいや、ゴーレムの素材はマジックバッグに入るから、持って行ってあげるよ」


「おお、いいモノ持ってるな、有難う。じゃあ売れたら半分あげるぞ」

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