第70話 盗賊2

「気が進まないけど……、鳥に見張られたら逃げきれなさそうだから行こうか」


ソウタが盗賊達の方へ歩きだすと、雷獣のリャンゾウが足元についていく。


「そうだね」

ナナミがアイテムバッグから「豊穣の杖」を出した。


「分かった!」

モモカはナイフを出した。


ドリアードのクロリスはニコニコしてついてくる。


ソウタ達は盗賊が待ち伏せしている場所に向かって歩く。


「クロリス、隠れている盗賊は任せるよ」


「了解です」

ドリアードのクロリスが地面に吸い込まれて行った。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「くくく、来た来た」


「女と子供と変な動物が一緒か」


「何だ、結構可愛い女がいるじゃねえか」


「まあ、ここを通ると言う事は旅人だ。金目の物も持ってるだろう」


「これは鴨が葱を背負って来たってヤツだな。女と子供は奴隷にして売っ払おう」


なんて人聞きの悪い会話をしながら、ソウタが近寄るのを待つ盗賊達3人。


「おい、ここから先は通さねえぞ。先ずは金目の物を出しな! 話はそれからだ」


ソウタ達が近付くと腰に差した剣を抜いてソウタに向けた。


「はぁ、見た通りの悪党達だな」

と呟く、面と向かって盗賊に言えないソウタ。


(やるキュ?)

足元のリャンゾウがソウタを見上げる。


「リャンゾウ、有難う。頼む」

ソウタはリャンゾウを見た。


「ははは、坊主、目を逸らせちゃいけないぞ!」

盗賊が剣の腹でソウタを横凪ぎに払う。


ソウタはコミュ症で大人の男と話す事は難しいが弱くはない。毎日のように魔物を狩っているのだ。むしろその変にいる冒険者達とは雲泥の差がある。


ソウタは余裕で剣を躱し、後ろに飛び退き盗賊の男手を睨む。


「ほう、ちったぁやるみたいじゃ──」


ドサッ……。


盗賊は最後まで話す事が出来ず崩れるように前のめりに倒れた。


盗賊の足元には雷を纏ったリャンゾウがいた。


(キュウウウウウ)


「何だ! 何があった?」

咄嗟に剣を抜きソウタに走り寄る二人の盗賊達。


倒れた男の影になってリャンゾウが見えなかった男達は、剣を躱したソウタが何かをしたと思っていた。


「次は私ね」

モモカが身を屈めながら走り寄る盗賊に向かった。


「無理しないでよ」

ナナミが「豊穣の杖」を振った。


盗賊達の足元に生えていた何の変哲もない道端の草が、盗賊達の足に絡み付いた。


ドタッ、バタン!!


「うがっ」

「ちっ! なんだ?」


足を草に絡まれて転ぶ盗賊にモモカのナイフが首に当てられた。


もう一人の盗賊は……。


「よいしょっと。そーれ」

豊穣の杖を振りかぶったナナミが、ゴルフのスイングのように盗賊の顔を叩いた。


ゴガッ!


「ひでぶっ」

気絶する盗賊。


「さて、身ぐるみを剥いじゃおうか」

モモカにナイフを突き付けられた盗賊の元に歩いていくソウタ。


「て、てめえ! こんな事をしてただで済むと思うなよ」

盗賊はソウタを睨むと。


「みんな! やっちまええええええ!!」

周りの草むらに向かって絶叫した。


草むらからガサガサと音がして、現れたのはクロリス。


「みんなって私の事?」

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