第60話 王命
辺境スギンビの領都にある領主の居城に集まったスギンヒの幹部達。
会議室の大テーブルの席に着いているのは、ビーカル辺境伯と……。
採取士ギルドのギルド長で、とある村の村長であるコエザ。
冒険者ギルドのギルド長コヤマザ。
商人ギルドのギルド長ニーオヤ。
錬金術ギルドのギルド長ヒンマル。
テンダイジモン教の大司教ライゴー。
そしてソウタ。
(子爵の爵位を返上したのに、何でこんなところにいるんだ?)
とやる気が全くない顔をして、テーブルに置いた両腕に顎をつけているソウタ。
「おう、みんな揃ったな。本日は集まってくれて有難う。早速だが、今回集まって貰ったのは……」
ビーカル辺境伯は会議室に集まった仲間達を見回す。
「国王が俺達に戦争に参加させようとしている件について話したい」
「戦争!!!」
ソウタは思わず声を上げた。
「え? スギンビは兵役を免除されているんじゃないのか!」
コヤマザが思わず声を出す。
「その通りなのだが、どうやら国難の緊急措置として王命を出す事になった」
ライゴーがビーカルに替わって答えた。
(ライゴーの鉄鼠が得た情報なのか)
ソウタはそう思った。
「ビーカル様、それでどうするのですか? 王命に逆らう事は出来ぬでしょう」
ヒンマルがビーカルに尋ねる。
「ふん、俺が苦労して発展させたビーカルの街を褒美と言って取り上げ、開拓が必要な辺境に押し込めて、金と人材を使ってやっとこれから発展出来る目処がたったところに、免除されてた兵役を強制されるんだぜ」
「うむ、出兵は戦費もかかるし、少しずつ集まって増えてきた領民達を戦争で出兵させる事になれば、また一からやり直しになりかねないのじゃ。侵略の戦争ならともかく、防衛の戦争では領土が増える訳ではないから、仮に隣国を撃退しても報酬はたかが知れてるしのう」
コエザが難しい顔をして考えながら発言した。
「しかし、かといって王命に逆らえば反逆として討伐対象になるでしょう」
ニーオヤは震えている。
「けっ、戦争で手一杯でそんな余裕はねえよ」
「だったら、断ると言うのですか?」
ヒンマルがビーカルをじっと見詰める。
「ああ、断る。その話をみんなにするために集まって貰った」
「しかし! ここで王国が隣国に負ければ次はこの辺境にも隣国が責めて来ますぞ。また、王国が隣国を退けても次は王国が辺境に討伐軍を寄越す。軍隊の形も整っていないこの辺境には抗う術はないでしょう。いずれにしても未来はないじゃないですか!」
ヒンマルは興奮して大声を出す。
「ヒンマル落ち着け。軍隊の形も整っていない辺境に出兵要請とは、酷い話もあったもんだ。戦闘訓練をしていない領民を、兵として出さざるを得ないじゃないか。戦力として役に立つのか?」
ニーオヤが口を挟む。
「王の狙いは回復薬だ。うちの領民は盾にでも使って、回復薬で正規の軍隊を効果的に戦わせるのだ」
ライゴーが王国の狙いを説明する。
「ここで回復薬までも徴収されるのか……」
ニーオヤは顔を伏せた。
「だ・か・ら! 断るんだ!! それに隣国や討伐軍から辺境を守る防衛の軍隊の目処はつきそうだ。後は俺達の意思を固めて一致団結し事に当たるのみよ」
ビーカルがそう言った後、防衛の軍隊についてみんなに話した。
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