第49話 リーキヤ公爵
ソウタの住んでいる国は、ヤイムラ王国と言う。
周りを他の国に囲まれている小国で、その中の幾つかの国と戦争中だ。
ヤコイケ印ので回復薬が、上品質で薬効が優れていることが知られると、国軍でも正式に採用された。
優れた回復薬により、無理が利く様になると戦線が拡大した。
その為、ヤコイケ印の回復薬は更に売り上げを伸ばす。
その為、ヤコイケとビーカルは空前の好景気に湧いていた。
その様子を見て面白く無いのは、隣の領地の領主であるリーキヤ・ドバ公爵だ。
「冒険者上がりのビーカルめが……、ダンジョンの素材だけじゃ無く、回復薬にも手を出しおって、しかも大儲けじゃないか……」
側近のメアサ・ダアがリーキヤ公爵に話し掛ける。
「リーキヤ公爵、ビーカルはどこの派閥にも入っていない、平民上がりの田舎領主、やりようは幾らでもあります。ビーカル領を奪い取りましょう。イッヒッヒ」
「お、メアサ、何か良い手があるのか?」
「良い案があります、イッヒッヒ」
「よし、ビーカルの領地が手に入った暁には、お主も男爵に叙爵してやろう。ぐははは」
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数ヶ月後、ソウタにビーカル伯爵から火急の用事で召喚の要請があり、居城を訪れたソウタとコエザ。
「ビーカル伯爵、火急の用事とは、如何されましたのじゃ?」
コエザがビーカル伯爵に尋ねる。
「おう、リーキヤ公爵に嵌められたよ。転封を命じられた……」
「テンポウ?」
ソウタは意味が分からず首を傾げる。
「領地替えの事じゃよ」
「え! 領地替え! そんな事があるの?」
(うはっ、折角領地を発展させたのに、領地替えを命じられたら、元も子もないじゃん)
「どうして、その様な事になったのじゃ?」
「形の上ではダンジョンの運営と、採取士ギルドの設立に伴う、上質の回復薬の開発と流通に対する褒美だが、裏を感じるな」
「で、どこに転封になったのじゃ」
「スギンビだ」
「辺境だのう」
「辺境さ、ダンジョンの運営のノウハウを活かして、辺境のモンスターから王国を守護すると共に、素材の採取で王国の発展に寄与してくれだとよ。領地の大きさは増えたが、ダンジョンと違って、防衛にも力を入れる必要がある厄介極まりないよ」
「ふむ、断れなかったのかのう」
「国王は良かれと思っているから、始末に負えんよ。褒美のつもりだからな。叙爵付きの転封だ。断れる訳が無い」
「叙爵? 侯爵にでもなったか?」
「辺境伯だとよ。叙爵になるのか良く分からん王国初の爵位だ。侯爵相当と言ってるが、実質は侯爵と伯爵の間だろう。今とあまり変わらんよ」
「ふむ、現ビーカル領は誰の物になるのじゃ?」
「リーキヤ公爵だ。恐らくはリーキヤ公爵が裏で手を回したんだろうな」
「はぁ、王家にコネが無いと貴族は厳しいのう」
「全くだ、やってられん」
ソウタは、ビーカルとコエザの話を聞いているだけだったが、裏で色々政争があるんだろうと思うと、『貴族って面倒くせぇ』と思うのであった。
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