第38話 冒険者ギルドの受難
会議が終わり、冒険者ギルドに帰ってきたギルド長コヤマザ。
「ギルド長、浮かない顔をしていますが、どうしました?」
心配した職員がコヤマザに尋ねた。
「くぅ、回復薬を錬金術ギルドから、回して貰えなくなった上に、採取士達がダンジョンにも入る様になる……」
「え? ギルド長、それは……」
顔が青くなる職員。
「ギルド長! どういう事ですか? ソウタ男爵の薬草納品がなくなって、ギルドが赤字になりそうなのに、回復薬の仕入がなくなった上に、採取士がダンジョンに入れば、ダンジョン産の素材の持ち込みも減るじゃないですかぁ!」
経理担当職員が、コヤマザの言葉を聞いて憤る。
「この前、低ランク冒険者達が近隣の生息地から、薬草を根刮ぎ取って来たらしい。絶滅しない様に普通は少し残すのだが、ね・こ・そ・ぎ・だぁ!」
『ふぅ、ふぅ』と息も荒くなるコヤマザ。
「あ! もしかして、絶滅しちゃったとか」
受付嬢カマルカが職員の陰から顔を出す。
「そうだ。近隣の薬草の生息地は絶滅! 採取士は薬草の安定採取の為に、ダンジョンに入る事になった」
コヤマザは握った拳をプルプル震わせる。
「あの馬鹿どもぉ! そこまで馬鹿だったか?」
職員も怒り心頭だ。
「しかも、あの時馬鹿どもが採取した薬草は、採取の仕方と保存方法が雑で二束三文にしかならなかったと言うのに……」
コヤマザは俯き震えている。
「買い取り出来る状態なら、まだ増しでした。大半は雑草や毒草と混ぜたり、モンスターの血肉まみれで、ゴミになったのですよ! あいつらぁ、どこまでギルドに迷惑掛ければ、気が済むんだぁ」
会計担当の職員は大声を上げた。
「うはぁ、これからどうなるの?」
カマルカは割りと他人事で実感がない様だ。
「どうもこうもない! 職員の減給と冒険者の報酬を下げるしかないでしょう。ギルドの蓄えてた資金も、この前の罰金で底をついたのですよ」
経理担当の職員は呆れた顔で、カマルカを見る。
「ちょっと待ってよぉ! 私は罰金の分割払いの給与天引きで、手取りが減ってるのよぉ! これ以上手取りが減ったら──」
「自業自得! そもそもカマルカが、カモリナに対抗して、『狂鬼』の嘘の報告を精査せず、冒険者達を焚き付けたのが原因だろ! 首にならないだけ、増しだと思えぇ!」
経理担当の職員がカマルカの発言を遮り、ジロリとカマルカを睨むと、ギルド長も職員もカマルカを睨む。
「うっ……、うううう……」
しくしく……。
皆に睨まれて、四面楚歌のカマルカは、何も言い返せず、押し黙り泣き出す。
「はぁ、ソウタ男爵が、冒険者の活動をしてた頃は良かったなぁ。」
職員は現実逃避をはじめる。
「そりゃそうだ。最上品質の薬草を大量に買い取りしてたんだから、ギルドも大幅黒字だったよ。職員に臨時の報酬も払えるってもんだ」
経理担当の職員も、ソウタが冒険者として活動してた頃を、懐かしむのだった。
「くぅ、ギルドをあげて、ソウタくんをもっと大事にして、冒険者を続けて貰えれば良かったんだが……」
ギルド長も悔やんでいるが後の祭りだ。
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