第27話 公開裁判3
「つまり、『狂鬼』とその他の冒険者達が無実のソウタ殿を捕らえようとした為、ソウタ殿は採取に行く事が出来ず、都市の経済が悪化したと言う事だな」
ステージの上にいた初老の男が立ち上がって、冒険者パーティー『狂鬼』のリーダーであるカイズを睨む。
この男は、城壁都市ビーカルの商人ギルドのギルド長ニーオヤ・ツカンパだ。
「はぁ? 『草毟り』が採取しないぐらいで、そこまで大袈裟なぁ」
『狂鬼』のリーダーであるカイズは、反論するが……。
「まさしくその通りだ。ソウタ殿の良質で大量の薬草の納品が無くなり、回復薬も在庫が無くなっている」
錬金術ギルドのギルド長ヒンマル・ダイショクも同意している。
「さて、『狂鬼』の強盗未遂が明らかになったところで、仕置きをどうするかと言う事になりますが、錬金術ギルドは、『狂鬼』の処刑を求めています」
「ひぃ……」
「そ、そんなぁ……」
「脅しただけなのに……」
「殺すつもりは、なかったんだよぉ」
『狂鬼』の5人は脂汗を流し怯える。
「ちょっと待った! 商人ギルドは損害の補填を求めるぞ。今回の騒動により商人ギルド被った被害額はこの紙に纏めている」
商人ギルド長ニーオヤが発言し、書類を役人に提出した。
「うむ、明らかに『狂鬼』と冒険者共の暴走で、錬金術ギルドも被害があった。我らも損害額を請求する」
「え? 冒険者共って……」
「俺達?」
「だって、俺達も『狂鬼』に騙されて、『草毟り』を探しただけだぞ」
観衆に紛れる冒険者達が騒ぎ始めた。
「静粛に! 領主であるビーカル伯爵から、仕置きの決定が下されます」
静まり返る観衆。
「おう、領主のビーカルだ。ちょいと聞いてくれ。『狂鬼』の罪状と、みんなの希望は理解した。」
領主ビーカル伯爵は、気さくなおっさん風に軽い感じで話を始めたが、眼光は鋭く隙の無い、侮れない雰囲気があった。
「そこでだ。『狂鬼』の5人は終身鉱山奴隷にして、その代金を商人ギルドと錬金術ギルドの損害に充てる」
ビーカル伯爵は『狂鬼』の5人を睨む。5人は俯き観念した様子だが、最悪の死刑を免れた為、ちょっとホッとした感じだ。
「それでも損害額は全く足りないので、冒険者ギルドの受付嬢カマルカとソウタを追い回した冒険者達に罰金を科す」
「ええええええ! 私も『狂鬼』に騙されたのです。罰金なんて酷い!」
カマルカが半泣きで大声をあげた。
「そうだそうだ!」
「俺達も『狂鬼』に騙されたんだ」
「罰金なんて横暴だ!」
騒ぎ出す冒険者達。
「黙れぇ! てめえらはギルド職員と冒険者の癖に、事の真相も確かめず、『狂鬼』の言葉だけを信じて、罪のないソウタを追い詰めようとした事は明白! その為に都市は大きな損失を出してんだ! 罰金で済んだだけ、有難く思え!」
「うわーん」
泣き崩れるカマルカ。
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