第17話 採取士
錬金術師コエザの屋敷に行った翌日、ソウタと雷獣のリャンゾウが冒険者ギルドに行くと、受付嬢のカモリナが駆け寄ってきた。
「ソウタくん、ソウタくんに指名依頼が来てるわよ! しかも錬金術師のコエザさんからなのよ」
(ん? コエザさんから指名依頼をして貰う事にしたから、それは知ってるけど、そんなに驚く事?)
「はぁ、コエザさんから指名依頼をして貰う事にしたので、それは知ってます。何か難しい依頼でしたか?」
(難しい依頼なら、コエザさんに頼んでキャンセルして貰おう)
「え? 依頼は普通の内容だけど。コエザさんと知り合いだったの?」
「はい。村でお世話になった錬金術師の師匠です」
「コエザさんは錬金術師の大御所なのよ、この都市の錬金術師の殆どはコエザさんの弟子なのよ。そんなコエザさんから指名依頼が来るなんて、しかも初心者のソウタくん宛だったからビックリだったの」
「うはぁ、そうなのですね。それは知らなかったです。まあ、依頼内容が普通なら受けますよ。冒険者は初心者でも、採取は初心者じゃないですから」
「そ、そうだったわね。常設依頼で納品した薬草も上質だったわ」
その日から、ソウタの冒険者の生活が始まった。とは言っても、やっている事は村でやっていた事と同じ採取だ。
しかし、聖獣契約とアイテムバッグと鑑定のゴーグルがある事で、飛躍的に効率が上がった。
リャンゾウと念話で会話出来るので、意思疎通がスムーズになり、探したい薬草を伝えてリャンゾウの匂い探知で探し、リャンゾウが遠くにいるモンスターも探知出来るので、危険を事前に察知出来るのも大きい。
採取した薬草は状態が劣化する事無く、そして大量にアイテムバッグに収納出来るのだ。
鑑定のゴーグルで今まで見逃していた
薬草も採取する事が出来た。
一番有難かったのはレベルアップだ。
リャンゾウがモンスターを倒すと、経験値が入り、レベルアップする事で体力が増加した。
今までは休み休み採取していたが、休む時間が短くなり、歩く速度も速くなった。
結果、村で採取していた時より、大量の薬草を短時間で、採取出来る様になったのだ。
そんなソウタの事を快く思っていない低ランクの冒険者が沢山いた。自分達は命懸けでモンスターと戦い金銭を得ているのに、命を懸けないで薬草を採取するだけで、自分達より多額の利益を得ているソウタを『草毟り』と揶揄するのであった。
ソウタが冒険者として登録した事により、比較されてはいるが、採取と狩猟は別の職種だ。武器を持たず、防具も着けず軽装で森に入っていくソウタを冒険者達は苦々しい思いで見ている。
自分達は回復薬の購入、武器や防具の修理費や新調で、いつも金欠で喘いでいるのに、武器も防具も着けず。採取した報酬が全て利益になるソウタは、低ランクの冒険者と比べると、リッチな生活をしていた。
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