第13話 冒険者ギルド2

Cランク冒険者の大男ロカンが、ソウタの前に立ち塞がった。


「おいおい、ロカン! こんなガキんちょに気絶させられたのかぁ?」

「あっはっは、お笑い草だなぁ」

「ジャイアントハーフがこんなチビに負けるとはなぁ、がっはっは」


ロカンの仲間達が後ろではやし立てていた。


(おいおい、煽るなよぉ……)


ソウタはどうなってしまうのか、気が気でない。怖くて震えて顔が青くなって、冷や汗が流れてきた。


ソウタの足元では、リャンゾウがソウタの足に身体を寄せて、ロカンを睨む。


「煩い! お前等は黙ってろ! 俺はこの小僧に聞いてるんだぁ! てめえ、俺に何をしたぁ! 何で俺がギルドの入口で気絶してたんだ」


大声を上げるロカン。


「ひゃ、ひゃいぃ」


「はい」すら言いえない程、緊張しているソウタ。


リャンゾウがソウタの足にスリスリし、ソウタを見上げた。「元気出して! 俺がついてるよ」って言っているみたいだ。


リャンゾウに気付いて、ちょっと気持ちを落ち着かせるソウタ。


ギルド内にロカンの声は響き渡り、冒険者達の注目が集まっていた。


「ちょっと待って!」


女性の大声にみんなの注目が集まる。


受付嬢のカモリナが、受付のカウンターを飛び越えて颯爽と駆け付けた。


「ソウタくん、大丈夫よ。お姉さんに任せなさい」


小声でソウタに囁いたカモリナは、左手を腰に当て、右手でロカンを指差し、胸を張ってロカンを睨んだ。


「ロカンさん、何をしてるのかしら? ギルド内でこんな初心者の若い冒険者を、囲んで脅すなんて、Cランク冒険者のやる事かしら!!!」


(カモリナさん、かっこいー!)

ソウタは心の中で叫ぶ。


カモリナのピンと立った尻尾から、一歩も引かない不退転の決意が見える。


(尻尾! カモリナさんって獣人? 大きめのマリンキャップの中に獣耳けもみみがあるんだ!)


「むむ、いや……、そのぉ……、その小僧が……、俺を……」


キョロキョロ周りを見だしたロカン。


「あのねぇ、どこからどう見ても初心者の冒険者を脅す、悪党にしか見えないよぉ! ついでに言っておくけど、そんな冒険者は大嫌いだから、二度と私に声を掛けないで!」


ロカンは、冒険者ギルドに登録したばかりのEランク冒険者の少年に、気絶させられたなんて、このギルド内で他の冒険者に知られたくないし、ましてやちょっと気があるカモリナに嫌われるのも困るので……。


「え? そ、そんなぁ……。な、なんでもないんだ。小僧邪魔したな……」


悲しい顔ですごすごと去って行くロカン。


「ソウタくんに二度と手出ししない様にね!」


ロカンの背中に声を掛けるカモリナ。


ロカンは丸めた背中を向けながら手をあげて一言。


「分かったよ」


「おい、ロカンいいのか」

「しっかりしろよ」

「だらしねぇな」


ロカンの仲間もロカンの後を追って去って行った。


「カモリナさん有り難う御座いました」


カモリナに頭を下げて感謝を伝えるソウタ。


「いえ、何事も無くて良かったわ。何かあったら何時でも、お姉さんに相談に来るのよ」


カモリナはソウタの頭を撫でて、受付のカウンターに戻った。


(お姉さんって……、転生前の年齢も含めれば俺の方が年上なんだけどなぁ)


自分がちょっと情けない気がしているソウタだった。

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