第10話 城壁都市ビーカル

城壁都市ビーカルの旅人用の門に並ぶソウタ。ソウタの足元にいる雷獣のリャンゾウは珍しいらしく、周りの旅人がジロジロ見ているが気にしない事にした。


「はい。次の人どうぞ」


門番がソウタを呼んだ。


「は、はい……」


(はぁ、緊張するぅ)


「ん? そのモンスターは従魔かい」


「は、はい……」


恐る恐る村長から貰った村民証明書を門番に提出するソウタ。証明書にリャンゾウの事も記載してあるのだ。


「ん? どれどれ。ふーん、ヤコイケ村のソウタね。従魔の名はリャンゾウか種別は不明と……。この都市内で従魔を連れ回す時は 、冒険者ギルドで従魔の証を貰って、従魔に付ける必要があるぞ」


「は、はい……」


(ジメイさんに聞いてたから、知ってるので、この後行く予定だけど……)


「まあ、証明書もあるから銀貨2枚で通行出来るぞ。冒険者になれば入市料は無料になるからな」


門番は村長の証明書をソウタに返した。


「は、はい……」

(それもジメイさんに聞いてたから、知ってます)


ソウタは証明書を受け取り、財布から銀貨を2枚門番に渡し、都市に入った。


(あっ、冒険者ギルドの場所を聞いておけば良かった。)


キョロキョロ周りを見渡すソウタ。


人間に混じって、獣人や魚人、ドワーフ、エルフ、小人とか色々な人種が歩いている。


(すげぇ、獣人は耳と尻尾があるんだぁ。ヒレがあるのは魚人か? 耳が尖ってて長いのはエルフだね。凄く美しいなぁ。小さいくて髭もじゃなのはドワーフだな。もっと小さいのは小人かなぁ)


ヤコイケ村には人間しかいなかったので、ジーっと見てしまうソウタ。


正面に見える一際大きい建物に、剣とモンスターの冒険者ギルドのマークが見えた。


(あっ、正面に冒険者ギルドがあったぞ)


ソウタとリャンゾウは、冒険者ギルドに向かって歩く。


ソウタに転生前のラノベの話が甦る。


(冒険者ギルドっていえば、乱暴者の冒険者に絡まれるのが定番だからなぁ)


出来るだけ一目につかない様に、端の方を人や街路樹の影に隠れながら、冒険者ギルドを目指すソウタ。


足元にリャンゾウが走るその姿が目立たないはずはなく、隠れながら進む行動が、むしろ逆に目立っている事をソウタは知らない。


(良し、誰にも声を掛けられないでギルドに着いたぞ)


ギルドの入口の前に来たソウタ。


「坊主、ギルドにどんな用だぁ」


ギルドに入ろうとしたソウタの後ろ襟を掴み 、身長2mを越える巨体の男がソウタを持ち上げて話掛けてきた。


「ひゃい……」


(巨人? 巨人と言うには小さいか、巨人との人間のハーフかな?)


「俺はCランク冒険者のロカンだ」


「お、俺はソウタです。ぼ、冒険者の登録に来ましちゃ」

(あう……、噛んじゃったぞ)


「ふーん」

ソウタの上から下まで視線を行き来して、しげしげと見る冒険者ロカン。

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