この小説タイトルに対して、マチの声は……。

ちびまるフォイ

コレに対しマチの声は……

「今日の朝ごはんは何にしようかな。

 そうだ、今日はあえてのカレーにしよう!」


それに対しマチの声は……。


【朝にカレーとか信じられないですね】

【日本人の食生活とは思えない】

【なんかもう、えっ!?って感じです】


「う、うるさいな! ほうっておいてくれ!

 俺がなにを食べようが関係ないだろ!?」


それに対しマチの声は……。


【どういう神経しているんでしょうね】

【ウチらの価値観ではありえない思考です】

【もう死ねばいいんじゃないですか?】


「わかったよ! 食べなければいいだろ!!」


それに対しマチの声は……。


【だったら最初からそうすればいいのに】

【二転三転するのは考えがまとまっていない証拠】

【ああいう人が将来悪いことするんでしょうね】


「むきーー!!」


いつからかすべての行動に対してマチの声で裁定されるようになった。

けれど俺はマチの声が大嫌い。


反抗心をこじらせた俺はマチの声を破壊してやろうと思った。


「人間はもっと自分の気持ちに正直であるべきだ!

 マチの声なんかの顔色を伺う必要なんてない!!」


自分のようにマチの声で押さえつけられていることに

不満を抱えている人はいるはずだと声をあげた。


それに対しマチの声は……。


【人の意見を聞かないとかありえないですね】

【ちょっと信じられないです】

【よくわからないけど死ねばいいのに】



「ぐぬぬ……」


反対するマチの声は大きく、自分に賛同するレジスタンスなどはひとりもいなかった。

そんな現状に「そらみたことか」とマチの声は追い打ちをかける。


【もっといい方法があると思います】

【なんで反抗するしか考えられないんですかね】

【今どきの若者って感じがします】


「じゃあどうすればよかったんだよ!! 教えてくれよ!!」


それに対してマチの声は……。


【ああすればよかったんじゃないか】

【こうすればよかったんじゃないか】

【なにもそうする必要なかったんじゃないか】


思っていた以上に建設的な言葉が帰ってきた。


「俺はもしかしてマチの声を敵視しすぎていたのかも。

 ちゃんと意見を求めれば、こんなに便利で多知識なものはないぞ!」


マチの声に対して持っていた先入観を入れ替えた。


それからは事あるごとにマチの声を受け入れて実践するようになった。

その努力のかいあって、かねてより夢だった大学合格を見事にすべり落とした。


「ちくしょーー! 大学落ちちゃったじゃないか!!」


それに対しマチの声は……。


【まあそんな気はしていました】

【努力が足りなかったのかな、って感じです】

【そもそもこんな大学を選ぶところが間違いでしょ】


弱り目にたたり目もあってカチンときた。


「自分に責任がないからって好き勝手いいやがって!

 マチの声に従って大学を選んで、マチの声に従って勉強したんだ!

 なのにお前ら全然ダメじゃないか!!」


それに対しマチの声は……。


【え? そんなこと言っていたんですか?】

【正直覚えてないですね】

【それよりもっと面白いことないんですか】


「んなっ……! わ、忘れてる……!?

 こんなにも俺にとって大事なことを……!?」


それに対しマチの声は……。


【まあ、毎日いろんなマチの声をしていますし】

【ひとつひとつ覚えてるわけ無いですよね】

【ぶっちゃけ、自分がなに答えたのか覚えてないっす】


「な、なんて無責任なんだ……!

 俺はこんなにテキトーな言葉をあてにしていたのか……」


それに対しマチの声は……。


【マチの声をあてにしないのは問題だと思います】

【世間を知らなすぎる人の言葉ですよね】

【人の言葉に耳を傾けられないんですかね】


「いちいち俺にコメントしないでくれ!」


それに対しマチの声は……。


と、マチの声が差し込まれる前にマチの声受信機と送信機をくっつけた。


マチの声は……。


【いったい何をしているんでしょうね】


それに対しマチの声は……。


【何をしているのかもわからないんですかね】


そのマチの声に対し、マチの声は……。


【ご意見番であるマチの声をマウント取りに使うなんて最低】


そのマチの声に対してのマチの声に対し、マチの声は……。


【まじありえないんですけど】


そのマチの声に対してのマチの声に対してのマチの声に対し、マチの声は……。


【思考ゼロの言葉をコメントするなんて、マチの声として考えられない】


マチの声は……。

マチの声は……。

マチの声は……。


マチの声をループさせていくと、だんだんトーンダウンしていった。


そのうち、マチの声をしたことで、他のマチの声に否定される怖さから

もう誰も俺の行動に対してマチの声を出さなくなった。


「これで自由だーー! もう誰も俺に好き勝手言わせないぞ!

 なにがマチの声だ! 俺をわかっているのは俺だけだーー!!」




それに対し、ミチの声は……。


【ヤハリ、ニンゲンハ、ジブンガッテ。コンナワクセイ、ホロボスシカナイ】

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