消化器官

"運命"というモノは過酷なものだ

突然突き飛ばして押し倒した挙句

逃げられない様に組み敷いて

「我を受け入れよ」

と責め立てる

泣き叫んで赦す程甘くない

混乱したままの頭で

どんなに抵抗してももがいても無駄骨で

その内疲弊して精神が侵されてゆく

神経が衰弱しきった後でも時間はただ過ぎて行くばかりで

その悪夢の時間ですら記憶から抜けそうにない

…こんなにも忘れてしまいたいのに…

何故海馬は

忘れたいことに限っていつまでも止め続けようとするのだろうか

しかし

ただの悪足掻きだとは分かり切っていても

そう簡単に諦めないのが人間だったりする

愛憎渦巻くこの世界で歩いて行くには

色々な受難を受け止められる位の度量がある程度は必要だ

でも容量に限界があるから

時には上手に逃げても良いとは思う

そうじゃないと頭に入り切れなくなって

壊れてしまう

人間は自分で生きて行く為の栄養を作り出せない生き物だから

回りのものを取り込み消化することで生を繋いで来た

自分に与えられたモノを咀嚼して飲み込んで総てを受け入れて

与えられるだけじゃモノ足らず

自ら捕まえて来たりもする

望まなくとも飲み込まざるを得ない場合もある

取り敢えず取り込んで置き

自分にとって然程害にならないもの

寧ろ有益になるものを選り抜いて

それ以外は適度に零して排除する

時間という名の元で跡形もなく

そうして新たに出来たスペースにまた新しいものを取り込もうとする

人間はひょっとしたら肉体という肉体の全てが余すこと無く消化器官なのかもしれない

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