卒哭

 いままでずっと一緒だったあなた

 でも今はもういない

 

 祭壇にある壷の中で

 静かに眠っている

 

 あなたが死んだというのに

 わたしの周りは静かに過ぎてゆく

 何一つ変わらず 

 時間が滞りなく流れてゆく

 

 あなたがいたのは

 夢だったのかと思うときもある

 

 まるで最初から存在などなかったかのように

 とても 平和だ

 

 私の気持ちだけが置いてきぼりにされている

 そんな感じ

 

 カレンダーが五月のままだ

 もう六月だからめくらないといけないけど

 そうする気になれない

 

 今まで当たり前のように存在していた日常は

 既に失われている

 二度と戻らない あの日々

 

 だって、先月まであなたは生きていた

 身体がそこにあった

 確かに息をしていたんだもの

 今はもう……影も形もないけれど

 

 明日は納骨堂に向かう日

 もうこの家から、卒業だね

 私も歩き出さないと

 きっと、ゆっくりしか動けないだろうけれど

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る