Unconscious
「気をつけろ。上から圧死だ」
「いや、寝そべっているから下からですよ」
「両方からじゃない?」
例えば、今こうして重なり合った存在たちが、それぞれ同一の性質を持った生命体であるとしよう。
現実を未確定とすると、精神負荷はどの大きさになると考えられるか。
なお、反物質は考慮せず、物理的な干渉のみの計算でよろしい。
「気が狂いそうだ」
「うるさいですよ」
「どこにいるの?」
部屋の色は白。状況は密室。パターンは3。
向かい合う者は居ないとする。
五感の制限はしていないが、思考回路の偏りは0ではない。
「俺はここだ」
「いないですよ」
「みえてないのかな?」
空気成分は通常の大気と等しいが、重力は相対性があるものとする。
なお、光は調整を行っていない。
また、確定事項として、三層以上の世界構造は設定していない。
「どういうことだ」
「わかりませんよ」
「りかいふのう?」
回答に到る手段の道標を示す。
次元は必然として、時間は付随するものである。
知覚と無意識は狂気へと至る矛盾である。
「あ」
「え」
「ん?」
受容した情報による現象の確定は存在する。
生命体を制御下においた世界において、発生する事項もまた制御下にある。
限定された場で、期待する事象は予測可能であり、可逆的なものとなる。
「爆発だ」
「凝縮ですよ」
「同じでは?」
この生命体は人工的な発生をしており、自然の複雑な関係性は無視できるものである。
原則として、生命体は観測されており、状態は確定している。
しかし、世界は確定してはいない。
「誕生だ」
「消失ですよ」
「同じでしょ?」
ごく微小な時間と空間の単位で考え、得られた式を積分することで確定までの時間と空間を得られる。
さらに、確定した数値を上記の公式に代入すると、精神におけるエネルギーの単位に変換できる。
変換した数値の符号が、虚数との関係でどちらになるか、十分留意して計算すること。
「せんせー」
「はい」
「精神体はどのくらいですか」
「同一のものとして、想像力もまた精神負荷によって変化しますので、自分で考えて下さい」
「過去は」
「同一のものとします」
「答えは収束しますか?」
「無限に拡散するはずです」
「計算を知らないのですが」
「あれ、まだリミットとかしてませんでしたか?」
「やってませーん」
「えー。失礼、この問題は来週の分野でした」
「やっぱり」
「でも実験してみましょうか」
教室の机の上で、今日も何かが進んでいく。
止まることなく、触れることなく。
ただ、進んでいく。
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