さようならになれてしまった、私たち。

さえ子

第1話 理想と現実

 「つまらない」この言葉が常に僕の頭の中にあったのは、つい一年前の事だった。

同じ日常、同じ景色、変わらない自分。

 何もしていないわけではない、もともと幼い頃から絵を描くことが好きだった僕は将来の事は考えずに「絵を描いていたい」という気持ちで美大に入った。


 でも、美大に入って一年が経つと周りの親戚は口を揃えて言ってくる。

「美大に入って将来どういう仕事をしたいのか」と。


 美術に関係する仕事に就きたいから美大に通ってるわけではない。でも周りの人の頭は、大学=将来の仕事という考え方がある。


 美術に触れていたい、学びたいという理由で大学に入ってはダメなのだろうか。

確かに大学はお金がかかる、何万の世界じゃないことくらい僕にだってわかる。

 それでも、今は何も考えずにただ絵について、美術、芸術について学びたい・・・そう思ってはダメなのだろうか。


 「将来の仕事はどう考えてるの」、そう言われながら過ごす日々は退屈でしょうがない。好きな事をやれているはずなのに、その言葉が僕を憂鬱にさせる。


 朝、AM6:00を知らせるアラームが鳴る。

今日も変わらない一日が始まる、それと同時に「つまらない」という感情が頭の中で目を覚ます。


 このまま何も変わらずに、大学を卒業してしまうのかと思ってた。

だけど、ある一言で僕の世界はガラリと変わった。


「この幸四郎の絵、SNSに乗せてみたら?」

そう言ったのは、幼馴染の莉子だった・・・。

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る