第25話 お茶会

さてと、今日はルカが来ているんだよね。エウロス殿下と、商談してるけど流石は商会の顔役。値切りに踏み込めない様、さり気なく言葉を誘導されてしまっている。それが、分かるからエウロス殿下も苦笑している。ルカは、いつもの暢気な微笑み。


「本当に、君って話が上手いよね。」


「ん?それは、褒めてますか?」


ルカは、契約書類を鞄に入れて首を傾げる。


「勿論だよ。さて、僕はこれから用事があるから、ここら辺で失礼するよ。また、次もよろしくね。」


エウロスは、そう言うと出て行く。


「では、取り敢えずこれをノイル様に渡しますね。おそらく、ノイル様が知りたい情報なので。」


ノイルは、書類を数枚めくり固まる。


「ルピカ、会議するから来て。」


「……今から、寝る予定だったんだけど?」


ルカの姿で、少しだけ嫌そうに呟く。


「どうせ、君も居る事だしお茶しようよ。」


「一度だけって、言ったよね?」


ルピカの姿になり、困ったように呟く。フードは、相変わらずつけたまま。一度しか、素顔は見せてくれなかった。取り敢えず、強引に連れ出す。


「ん?久しいな、導師ルピカ。」


「久しぶり…。何か、強引に連れて来られたんだけど。取り敢えず、座れば良いのかな?」


ルピカは、諦めた様に座ると話し合い開始。


「思ってた以上に、歪んでるよね世界の軸が。」


「まあ、仕方ないであろうな。少し前まで、賢者が堕ちる直前。聖女も、堕ちかけ。そして、導師もまた危うい。導師よ、身体は辛くないか?」


ルピカは、キョトンとしてから言う。


「大丈夫…ではないかな。でも、そろそろ商会をやめて俗世から離れようと思ってるよ。」


インフィーは、茶を飲んでから微笑みを浮かべる。


「うむ、それが良いじゃろう。心と身体、それが休まれば堕天は回避可能じゃからな。」


「うん、お疲れ様。でも、たまに頼るかも。」


ノイルは、笑いながらも言う。ルピカは、嫌そうな雰囲気を出すが苦笑して頷いた。暫く話している。


ノック音がして、カインの声がする。


「ノイル兄様、今お時間は宜しいですか?」


「ふはっ!?」


思わず、飲んだ紅茶を吐き出す。ルピカは、驚いてハンカチを渡し咽せたノイルを心配そうに見る。驚いて、勢いよく立ち上がった為にフードが外れているが、気にしている様子はない。


「大丈夫?えっと、弟さんかな?少し待ってくれるかな。ちょっと、君のお兄さんは混乱してるし。」


そう、ドアに向かって声を掛けるルピカ。


「あー、お客様が居たんですね。分かりました。」


カインは、苦笑な雰囲気で言う。


「いや、驚いた。生意気ボーイは、何処行った?」


ノイルは、混乱した様に言う。


「生意気?」


ルピカは、知らないのでキョトンとしている。


「ふふっ、少し前まで生意気な小童だったのじゃ。いきなり、お兄様と言われて混乱したのじゃな。」


インフィーは、口元を押さえて笑っている。


「取り敢えず、だいたいの話は終わったし、兄弟の時間を邪魔するのはかなり不粋だよね。」


ルピカは、フードを被ると立ち上がり言う。


「そうじゃの、ではまたの機会にの。」


インフィーも、立ち上がりドアを開ける。


「小童、余りノイルを驚かせるでない。」


「い、いや…わざとでは無いですよ?」


カインは、一瞬だけ口調が崩れかけたが言う。


「取り敢えず、ノイルはまだ混乱してるから。」


すると、カインはフードを被ったルピカを警戒。


「やめよ、小童!かのものは、導師エデルじゃ。」


すると、カインは驚いてから謝罪する。


「すみません、兄様を救った恩人に失礼を…」


「気にしないで、それが普通の反応だから。」


ルピカは、明るい口調でカインを安心させる。ノイルは、メイドに片付けを頼むと部屋から出る。


「それで、何か用件があったの?」


ノイルは、変な表情で言う。


「あ、お父様が食事でもしないかと。」


すると、ノイルは苦笑する。


「うん、断るよ。今まで、放置してた癖に食事でもしないか?とか行く訳ないでしょ?」


ルピカは、視線をインフィーに向け頷く。インフィーも、頷いてから無言でその場から去る。


「で、ですが…その…兄様は次期当主ですし。」


「なる気は、全く無いけどね。だいたい、親らしい事もされた事無いのに従う気は無いから。」


ノイルは、素っ気なく言うと自室に向かった。お茶を邪魔され、尚且つ神経を逆撫でされて腹が立ったのだ。今更、親らしい事しようなんて気持ち悪い。それが、ノイルの正直な気持ちだったのだ。


「だいたい、息子の誕生日すら知らない親だよ?カインしか、誕生日は祝ってなかったし。知らないなら、聞けば答えたのに…。いや、知ろうと思えば僕じゃなくても知れたはず。つまり、そういう事なんだろうなぁ…。はあ…、疲れちゃったよ。」


「ノイル様、お帰りなさいませ。」


クノンは、笑ってからお茶を出す。


「ありがとう…。飲んだら、夕食まで休むね。」


「お食事の招待状が、来ておりますが?」


ノイルの言葉に、クノンは暢気に聞く。


「行かない。いつも通り、食堂で食べるよ。」


「畏まりました。」


そう言うと、クノンは仕事に戻った。ノイルは、苦笑してからねむるのだった。

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