第21話 最悪な再会

※一応グロ注意




さて、大会が始まった。けど、何だろ…胸騒ぎがする。精霊や妖精が、何かと止めて来るし。でも理由は、絶対に答えてはくれない。いったい、何故?


「ノイル、どうかしたの?」


「えっと、大丈夫です殿下。」


エウロスは、ノイルの表情を見て険い表情。


「ノイル、君は支援にまわって。無理は、駄目。」


ノイルは、少しだけ迷うが大人しく頷く。すると、他のメンバー達は驚く。エウロスは、不吉な予感がして人払いする。そして、ノイルに真剣に言う。


「大丈夫、何があっても絶対に君だけは守ってみせるよ。だから、落ち着いて。君、息が乱れてる。」


「ごっ、ごめん…。」


ノイルは、ハッとして深呼吸を繰り返す。


「ノイル、君…瘴気を内に持ってるよね?」


「……っ!?そっか、君は知ってたんだっけ?」


エウロスの言葉に、思わず息を呑むノイル。だがエウロスは、未来を知っていると言っていたのを思い出して苦笑する。本来、瘴気は入っても抜け出すものだ。それが、身体に留まる理由はただ一つ。


その人に、深い心の傷と絶望感があるから。


「そろそろ、話してくれない?君の過去を…。」


「……。」


エウロスの言葉に、ノイルは泣きそうで苦しげな表情を浮かべた。しかし、その口から言葉は無い。


「ノイル、何を恐れているの?」


「恐れてる?」


ノイルは、キョトンとしている。


「うん。ねえ、僕じゃ力になれ無い?」


「……ありがとう、そう言ってくれるだけで救われるよ。大丈夫、ちゃんと励まされてるから。」


エウロスは、困った表情のノイルに食い下がる。


「君が、僕の味方である様に。僕は、君の味方なんだよ!だから、打ち明けて欲しいんだ!」


ノイルは、俯きポツリポツリと話し出した。


「殿下は前に、僕の初恋について聞いてたよね。」


「うん、教えてくれなかったけど。」


エウロス、キョトンとして頷く。ノイルは、語り出した。自分の罪と、渦巻く絶望感の理由を…


幼い頃に、街暮らしの僕には4人の友達が居た。強気で、人思いで明るい性格のライナ。元気で、お転婆でムードメーカーのサラ。運動が苦手だが、4人の中で1番の狡賢さを持つレイト。そして、僕と同じ剣聖の弟子で妹弟子のアリスである。


僕達は、仲良しでいつも遊んでたんだ。時には、喧嘩もしたけど普通に楽しかった。


ある日、僕が貴族の子だとバレて迫害されてた頃。


それでも彼らは、僕を心配して接触するのをやめなかった。それに激怒した、青年達がレイトに暴力を振るい殺してしまった。僕は、森に逃げる事で、彼らとの接触を遠ざけようとした。けれど、妹弟子とは距離が離せなかった。同じ、師匠を持つ弟子だ。


それに僕も、妹弟子であるアリスに恋心を抱いていたからだ。僕は、恋心を隠して距離を取った。


しかし、彼女も僕に恋していた。


結局、離れる事が出来なかった。そして、アリスは街に買い物に行ったきり帰らぬ人となった。大人達に囲まれ、袋叩きにされたらしい。身体中、アザや切り傷だらけで冷たくなっていた。


そして、ライナとサラは敵国に奴隷として売られた事を知った。当時は、戦争な真っ只中だった。そんな中、売られたのなら生きている可能性は低い。


それでも、必死に商人や精霊達に頼んで探した。


何とか、助けようと子供ながらに動いた。


けど、見つからなかった。見つからなかったんだ。そして、暫く時が過ぎ精霊達が言った。2人が、最後に見られたのは敵陣の最前線。しかも、自国の攻撃を防ぐための肉壁にされていたらしい。


そんなの、生きている筈がない。実際、戦死報告書には死亡と死因が書かれていた。ちなみに、戦争に勝った自国の騎士から見せて貰ったのだ。


その瞬間、傷ついた僕の心は引き裂かれた。


絶望して、頭が真っ白なぼくのなかで、瘴気が嘲笑うかの様に手招きをしている。堕ちてしまえば、楽になれる。何も、考えられずに済む。


僕は、瘴気に身を任せようと思った。


身を任せて、手招きをする手を握ろうとした。


しかし、おじぃーちゃんが泣いて引き止める。お願いだから、戻っておいでと泣きながら言うのだ。


「ノイル、お帰り。大丈夫、大丈夫だから。そんなに、自分を傷付けないでおくれ。お前は、良く頑張った。もう、休んでも良いだろ?悪いのは、大人なのだから。もう、やめてくれ…生きろノイル。」


正気に戻った時、ディル兄を含めお世話になった人達が集まっていた。周りは、荒れており魔力を暴走させたのだと気づく。幸い、怪我人は居なかった。


僕は、涙を流して謝った。


それから、余り手をつけていなかった賢者の修行を必死に取り組み。心を蝕む、瘴気の事を思考の中から忘れる事にしたんだ。実際は、忘れられずに苦しまされて来たのだけど。


ノイルは、涙を拭い困った様に笑う。


「もし、僕が堕天したら君が殺してくれる?」


「…っ!?ノイル、笑えない冗談だね。」


エウロスは、驚き息を呑むが険しい表情で言う。


「……そうだね。さあ、行こう。」


ノイルは、表情を隠して微笑むと歩き出した。


「ノイル、やっぱり試合に出ないで。」


「ん?」


エウロスは、ノイルが堕天した理由を思い出す。しかし、ノイルの登録はされてしまっている。


「た、体調不良とか…どうにかならない?」


「なるのなら、僕はここには居ませんよ。これは、四公からの指名であり、陛下からの命令です。いくら、胸騒ぎや不吉な予感がしても…どの道、逃げられません。だから、既に手遅れなんです。」


ノイルの表情は、大人びていて悟ったように笑う。精霊達さえも、姿を見せて引き止めるがノイルは、無言でフィールドに出た。エウロスは、覚悟を決める様にその背中を追い、素早くフィールドに出た。


目の前には、ローブ姿の魔法騎士。しかし、魔法騎士は魔法騎士でも相手は死霊術師である。そして、目の前には当時のままの4人が立っていた。


ノイルは、身体を震えさせる。ファイは、驚きノイルに駆け寄る。全員が、驚いた雰囲気である。


「ねぇ、これは何の嫌がらせ?」


エウロスは、険しい表情で問いかける。


「我らは、死霊術師ですからな。」


「あきらかに、ノイルを狙ってるじゃないか!彼らは、ノイルの大切な幼馴染なのに…」


それで、全員が納得した。ファイは、過呼吸を起こし俯くノイルを心配そうに見る。ロインは、何とか息を深呼吸をするように言う。アイリスは、青ざめ戸惑う。四公は、険しい表情である。


「まあ、これでもう僕は公爵家を継げない。ここまで、失態したら当主には出来ないだろうし。ありがとう、だいぶ呼吸も僕も落ち着いたよ。」


ノイルは、苦しげな瞳で4人を見る。しかし、悲劇はまだ終わってはいなかった。4人が、ノイルを見る。そして、憎しみの表情を浮かべて話しかけて来たのだ。勿論だが、彼らの身体はズタボロである。


「「「「ノイル、お前のせいで死んだ!許さない!絶対に、許さない!怨んでやる!」」」」


「だから、言ったんだ…。僕から、離れてって。」


ノイルは、虚な瞳で呟く。すると、黒いモヤがノイルから溢れ出した。ノイルの黒髪は、白くなり黒い瞳は真っ赤に染まる。そして、ノイルは賢者の姿になる。賢者達は、青ざめて何かを叫んでいる。


聞こえない、聞きたくない…。眠い…。


「サヨナラ…」


ノイルは、そう呟くと動かなくなってしまった。


ちなみに、死霊術師は処刑された。精霊達は、三日三晩に渡り泣き叫び精霊王は引きこもった。




しかし、賢者ケイロフ…いや、ノイルは死んではいない。剣聖の家で、無言で椅子に座り眠りについている。いつか、誰かが起こしてくれるのを待つかのように。それは、以外と早いのかもしれない。


精霊達は、3年後ノイルを起こせるだろう少年を見つける。精霊達に、迷いは無かった。妖精達と、連携を取り少年のもとに辿り着いたのだ。


同じ宿命を持ち、同じ特殊な立場であり闇を持ちながらも必死に生きるハーフエルフの少年のもとに。


バッドエンド?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る