頭痛持ちのエリクサー
「あいたたた……」
私は痛みに悶えていた。
決してえっちな意味ではない、そうであればどんなに良かっただろう……
テーブルの上にはロキソプロフェンナトリウムの錠剤とアスピリンのシートがおいてある、偏頭痛持ちのお約束だ。
「これを口うつしで飲ませてもらいたいですね、も○○け姫みたいな感じで……あ、あっちは立場が逆でした」
ロキソプロフェンとアスピリン、どちらを使うかはガチャだ、ロキソプロフェンが効く日もアスピリンが効く日もある、もっとも両方飲む機会のほうが多いわけだが……
今日は……アスピリンいっときますか。
セットで置いてあるゼリー飲料を飲み下す、空腹時の服用は胃へのダメージが大きい。
私は飲み終えても頭痛がおさまらず無意識にお兄ちゃんのところへ足を向けていた。
ギィ……
バタン……
ドアを閉めお兄ちゃんの胸に飛び込む。
お兄ちゃんが驚いた顔で私を受け入れる。
「おい、どうしたんだよ急に、またなんか思いついたのか?」
そういうお兄ちゃんを無視して私はお兄ちゃんを掴む腕に力を入れる、お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん……
「頭が痛くて……少しでいいのでこうさせてください」
お兄ちゃんは今日に限ってはそれ以上問わず私の頭にポンと手を置いてそっとしておいてくれた。
――三十分後
「ふぅ……さすがバイエル純正、効きますね! それにお兄ちゃんのサービスも……へへへ……」
「喉元過ぎればっていうな……そんな気分だよ」
お兄ちゃんは少し呆れながら私を遠ざける。
「あんまり鎮痛剤を使をすぎるなよ、内臓に悪いぞアレとか」
お兄ちゃんはロマンの欠片も無いことを言う、しかし私はこう返す。
「じゃあ痛みが引くまでお兄ちゃんが添い寝してくれますか?」
どうせ無理に決まっているのだがからかうように言った。
「ああ、無理のない範囲でな……あんまり痛いなら薬も使えよ」
え!? お兄ちゃんが……私は夢を見ているのでしょうか?
「ええっと……いいんですか?」
「無理して寝込まれるとこっちも食料に困るんだよ、甘えるくらいは構わんからあんまり困らせないでくれ」
よっし、言質を取りました!
これでお兄ちゃんは私が頭痛を訴えれば添い寝してくれるはずです。
ああ、なんて素晴らしいんでしょう!
「仮病したら次はないからな?」
お兄ちゃんの注釈で私は次の偏頭痛がくるのを楽しみにすることになったのだった。
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