補給線を断とう!

 うーん……お兄ちゃんがあんまり私への愛を語ってくれない気がします……


「そうだ! 食事を抜こう!」


 多分お兄ちゃんは一食抜けば私のありがたさに賞賛を送ってくれるはず!


 善は急げという事で今日の夕食は持っていかないことにしましょう、お兄ちゃんに会う回数が減るのは残念ですがこれも必要な犠牲! くっ寂しい!


 ――地下室


 あれ? 日が落ちたはずなのに来ないな?


 この地下室唯一の空である天窓が真っ暗になっているのに一向に妹が来ない。


 アイツは食事も持ってきてくれるので来ないのは非常に困る。

 ついでに言うなら誰でもいいから話し相手がいないと声の出し方を忘れそうだ。


 あるいは俺の時間感覚が狂ってしまいただの曇天を夜と勘違いしているだけなのだろうか?


 腹が減った……

 必要最低限の食事しかできないので一食抜くだけでもとてもしんどい。


 困った、妹がいなければいないでとても困ったことになる……あれ? そういえば……


「あー、妹っていいよなー、是非とも愛を語り合いたいなー、明日になったら忘れちゃうかもなー」


 余りにも白々しいアピールであるがこの部屋にはカメラとマイクの存在があると言っていたのでおそらくこの発言も監視されているだろう。


 発言するが早いかあっという間にドアが開いた。


「お兄ちゃん! 私のことを愛してるってマジですか!?」


 思い切り慌ててやってきた。


「おう、夕食を食べながら語りたいと思ってたところだ」


「よっしゃああああ! 夕食ですね! マッハで用意します!」


 バタン――ドタドタ――ガチャリ


 本当に即戻ってきた、夕食がお盆に載って出てきた。

 まあレトルト食品なのは急いだからだろう。


 パクパク……


 俺が食事をしていると妹が求めるような目でこちらを見てくる。


 少し悩むのだがきっとここで言わなかったら明日の食事に困るんだろう。


「ありがとな、可愛いぞ、お前」


「ふぉぉぉぉ!」


 なんか変な声を上げているが放っておこう。


 俺は食事を口に運びながら恍惚としている妹を眺めていた。

 ああ……スープが美味しい……

 インスタントのコーンスープだが空腹には非常にありがたい。

 空っぽの胃を液体で慣らして、一緒に載っているパンと唐揚げを食べる。


 どれもコンビニで買ってきたようなものだが空腹がそれを凄くいい味がする。


「ありがとな」


 冷静に考えればこの部屋に閉じ込められていなければ感謝する要素は一切ないのだが、感謝をしておかないと明日の扱いに関わる。


 こうして俺は今日の夕食にありついたのだった。

 そして妹に生殺与奪を完全に奪われていることに乾いた笑いしか出ないのだった。

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