第7話 対策を立て直す悪役ヒロイン令嬢
大きいが使用人の少ない邸に戻ると、私は一人で部屋に篭った。これからの対策を考え直すため。
そういえば、ギルドの受付をしたとき「次は卒業試験も兼ねますので、サポート役の正キャ員が一人つきます。がんばってくださいね!」って受付嬢から聞かされたような。
もしかして、本来は教師がその役目を追っていたのかしら?アクシデントが発生したから、リオルドはサポート役を乗っ取ったと。
そもそもナビゲーターって何なのかしら。
ただ、転生先を選んで案内してくれる人だと今の今まで思っていたけれど。ポイント制ってことは、彼もどこからか移籍してきた人よね。
もともとどこかのギルド所属で、そこでポイントが溜まったからナビゲーターに?
「どう考えても、悪役イケメンギルド出身よね」
正統派なイケメンでは、ない。
それにあのすらりとした体躯を思い出せば、悪役マッチョギルドでもない。
そこまで考えて、押し倒された瞬間のことまで頭に浮かんで私の顔は一瞬で朱に染まる。
「うっ……!」
邪念が!悪役令嬢ともあろう私が、あんな男に振り回されるなんて!悔しさがこみ上げ、お腹や胸のあたりが苦しくなった。
「早く終わらせよう」
ぽつりと呟いた私は、リオルドのことはいったん忘れて今後の対策を練る。
「週末には、街でのおでかけイベントがあるわ。賭博場へ行こうとするお父様の後を追って、危ない目に遭いそうになったところをお忍びの王子様が助けてくれるってシナリオよね」
父親のことを怪しんだヒロインが、どこへ出かけるのかと後を追いかけるのだ。父親は賭博にハマって借金をしているのだが、家族にそれを隠している。
「ほんと、なんでヒロインの親や親戚ってロクでもないのかしら」
まともに子育てしているとも思えないのに、ヒロインはまっすぐに育つ。ロクでもない親からまともな子が育つことがないとは言えないけれど、ヒロインの家庭事情に至っては遺伝子のバグがすごいなといつも思っていた。
あ、でも悪役令嬢の私だって、大抵は国の重鎮やお金持ちの家に生まれて、きちんと教育を受けているはずなのにものすごく性格が腐っている。
どっちもどっちだわ。
「おでかけイベントの次は、新入生歓迎会。ダンスパーティーで、ドレスが貧乏くさいと陰口を叩かれていた私を王子様が庇ってくれるっと」
婚約者のソフィーユが、ヒロインに殺意を抱くシーンね。
あの子、ハンカチを噛みしめるようなダサい演技を何とかしてもらわなきゃ。気が逸れて仕方がないわ。
ソフィーユとは何度かギルドの休憩時間に話したことがあった。
実はソフィーユは、「憧れているから握手して欲しい」と言ってきた私のファンなのだ。
まさか一緒の物語に入れるなんて思ってもみなかった。
毎日のように小さい嫌がらせや文句は言ってくるものの、どうにもパンチがない。あんなことでポイントが稼げるか、こっちが不安になってくるわ。
そういえば、お忍びの王子様にソフィーユもくっついてくるはず。
おでかけイベントで、私がつけている母親の形見のネックレスをいじってくるはずだから楽しみね。
ソフィーユとのやりとりに期待してしまい、つい私は口角が上がる。
よし、いける。
見事にいじめられ、そして私はポイントを稼ぐのよ!
結局のところ、ポイントを稼げるかどうかは悪役令嬢との協力作業みたいな感じだし?後輩との共演で、有終の美を飾るのも悪くない。
私の胸には一気に希望が広がった。
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