第22話 想定外の悪夢


 サトル達は、イベントクエストである遺跡の近くにある村滞在していた。明日には近くにある遺跡へ向かう予定だ。


 スカーレット王女と役人が話していた通り、腕輪を見せると宿泊代も食事代も無料となっており、4人は村の特産料理に感動している。


「それにしてもこの腕輪は凄いよな。宿も食事も無料、腕輪を見るだけで村人の表情が明るくなったように思う」


「それにステータスが見られるようになるのも不思議ね。私たちだけにしか使えないって話だけど、どういう仕組みなのかしら」


 ゲームではお馴染みのステータス画面も、現実では確認しようがない。しかしこの腕輪を使えば、自分だけが確認できるようにウインドウが表示される。


 魔法なのか、魔法道具なのか、それとも別の仕組みなのか、サトルたちはその技術力に感嘆するばかりだ。


 いつものように4人で食事を取り、装備を確認し準備もOK。そして明日の予定を確認して皆はそれぞれ就寝した。



 しかしその夜、まさかの事態が起きる。


 まず異変に気付いたのは召喚獣のボンたちだ。サトルと同じベッドで横になっていたが、異様な気配に自慢の毛が逆立つ。



“これは… これはマズいラ!! みんな起きるラ!!”


 ボンが念話で仲間に危険を知らせる。


 今までダンジョンに入って一度も見せなかった行動に何かを察知し、サトルもその異様さを感じベッドから飛び起きた。


「どうしたボン、何が起こったんだ!」



“サトルさま。今すぐ皆を連れてここから立ち去ってください。詳しい話をしている時間はありませんラ。できるだけ遠くに、早く!”



 その瞬間、外で爆発音が響き渡り、炎が舞い上がった。


 そして彼らが滞在している村に警報が鳴り響き、サトルが空を見上げると、そこには巨大な魔物が宙を舞っていたのである。



 サトル達は気付いていないが、その魔物はレベル45クラス、レベル15の彼らではとても戦える相手ではない。


 しかしその魔物が暴れまわる姿を放置できず、サトル達は討伐へ向かおうとする。しかし彼らの召喚獣は反対してきた。



“あの魔物は倒せません。ここは逃げましょうラ”



「村人たちを放置できない。4人なら何とかなるはずよ!」


 すでに戦闘態勢を整えたエリは戦うべきだと叫んだ。


「そうだ。危険かもしれないが、このままだと村人達がもっと危険だ。彼らを置いて俺たちだけが逃げるわけにはいかない」


 エリとサトルは召喚獣の意見を聞かず、すでに走り出している。


 そしてそれをマッキーとワカナも追い、4人は彼らよりはるかに強い魔物と戦うことになった。



 村の北側に降りた魔物は、何かを探しているのか、それともただの遊びなのか、家畜や村民を追い回っている。


「あれは…」


 サトルは何かに気付いたが、もはや引き返せる状況にない。


 するとエリの魔法が魔物に向けて放たれた。レベル15の火球砲弾である。


 だが魔物が手を払っただけでその火球砲弾は消滅し、その衝撃波はサトルとエリをまとめて吹き飛ばした。


 あまりの衝撃に二人は唖然とする。


 魔物は自らを攻撃したエリに狙いを定め、恐るべきスピードで飛び掛かったが、マッキーが放つ渾身の一撃が魔物を止める。


 しかしそのマッキーは魔物による直接の打撃で致命的な一撃を受ける。木々をなぎ倒しながら吹き飛ばされ、意識は一瞬で刈り取られた。そして電池の切れた人形のように、その巨体が崩れ落ちた。


「そんな…」


 エリは相手の強さに驚愕したが、サトルの一言でさらに厳しい現実に戻される。


「あれは…ソーマジック・サーガの伝説の宝玉イベント、ラストダンジョンに出てくる魔物。おそらくレベルは40以上、今の俺たちでは、勝てない…」


 マッキーの回復に努めていたワカナが悲壮な声でサトルに指示を仰ぐ。


「回復が追いつきません。このままでは… どうすればいいですか!」


 魔物は4人を見比べながら何かを吟味しているかのようだ。サトルは意を決して二人に指示を出す。


「エリ、ワカナ、ここから逃げろ。あれは無理だ。マッキーは助からない。俺は二人が逃げる時間を稼ぐ。力になってくれるかはわからないが、王都まで行ってスカーレット王女に助けを求めろ」


「そんな…」


「ちょっと待って、そんなことはできない」


「娘も待っているんだろ。俺たちのことはいい、諦めろ。別の仲間を探して日本へ帰れ」


「嫌です。私はサトルさんといます」


「そうよ!今さらそんなことはできないわ!」


「4人とも死ぬ必要はない!いいからいけ!」


 そんなやり取りを意に介すことはなく、その魔物は巨大な黒い炎のような塊を浮かべた。その数はおよそ100。


 そのすべてがサトルたちに向かって放たれる。


 威力、数、スピード、そのすべてを兼ね揃えた黒い炎は、ワカナによって張られた防御魔法を難なく貫通し、寸分の狂いなくサトルたちに致命傷を与えた。


 4人は指先を動かすこともできず、もはや命は風前の灯火と思えた瞬間、彼らと魔物の間に4匹が立ちはだかる。



“だから反対したのですワ”


エリの召喚獣ミーナがつぶやく。



「召喚獣の力」へつづく


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます