第二章:明らかになっていく真実
第21話 遺跡調査
≪≪室長。現状の報告です。
各パーティーともダンジョンを被らずに攻略中。
ただし最後の第4パーティーはかなり攻略スピードが早く、このペースでは第3パーティーが「狼の谷」をクリアする前に接触するかもしれません≫≫
<どれぐらい時間があれば大丈夫か?>
≪≪第3パーティーの進行状況と実力からすれば、一週間もあれば≫≫
<そうか…。ならイベントを設定するか。そうだな、鳥の森の西側に3号タイプの遺跡を配置するから、そこを調査させろ>
≪≪わかりました。第4パーティー用にクエストイベントを与えて時間を調整します。遺跡の設置はどれほどかかりますか?≫≫
<2日で終わらせる。あっちに手配しておけ>
サトルたちが11階層に挑戦してから3日が過ぎた。攻略は順調に進んでおり、今のところ懸念すべきものはない。
すでに14階層は突破しており、今は15階層で巨大な鳥の化け物を相手に奮戦している。
それは10階層で倒した化け物を雀に例えるなら、鴉ほどの大きさだろう。当然のことながら、体力も魔力も力も、10階層の化け物よりはるかに強い。
「サトル!敵の動きが早い!どうすればいいの!」
「大丈夫だ。あと30秒ほどで攻撃パターンが変わるはず。そこで一気に攻撃を加える。それまでみんな耐えて!」
「「「わかった」」」
確かに強敵だ。しかし3人に焦りは見られない。それはサトルを仲間としたことで得た安心感からくる。
どんなときでも冷静沈着であり、常に最適解といえる決断を下す判断力。
知識は群を抜いており、実際に攻略スピードは大幅に上がり、危険な状況に陥ることもなくなった。
この15階層での戦いも最初は相手の動きに戸惑ったが、結局はサトルの作戦通りで決着。早くもレベルは15に達したのである。
「みんなお疲れさん。最初は硬さがあったけど、途中からはスムーズだったな。いい感じにパーティーも仕上がってきたと思うよ」
「これもあなたのおかげね。ただ、3日間もダンジョンに潜りっ放しはさすがに疲れたわ。そろそろ一度戻って休まない?」
「それは賛成だな。武器の手入れもしたいし、食事とベッドが恋しいぜ」
「私も…そうしたいです…」
「そうか?俺はまだまだ一週間くらい大丈夫だけどな」
(((マジかよ…)))
「まぁ、週休二日制とは言わないが、休みもうまく取り入れないと、この先体も精神ももたないぞ」
「サトルはもう少し女心がわかったほうがいいわよ。さすがにお風呂に入りたいわ」
「それもそうだな。なら一度戻ろう」
3人はやっと休めると思いながら、それを口に出さずホッとした。
帰りは魔物を避けつつ一直線に出口へ向かったところ、ダンジョンの出口に兵士が立っているのに気付く。
サトルは剣に手を置き、警戒しながらその兵士に視線を合わせると、彼らの方から話しかけてきた。
『サトルさま、マッキーさま、エリさま、ワカナさまでございますね。
私たちはイスタ王国第2衛兵隊所属のものです。本日は4人へ依頼があって来ました。
少しお時間を頂戴してよろしいでしょうか?』
王国の衛兵が直接依頼を届けることに違和感を感じつつも、断れるような雰囲気ではなかったし、サトルは何か裏があると考えた。
「それはスカーレット王女からの依頼なのか、それともイスタ王国からの依頼なのか?」
『これはイスタ王国からの正式な依頼です。
このダンジョンから西へ1000メトル離れた場所に、未調査の遺跡があることがわかりました。
依頼の内容はその遺跡の調査と、危険の排除です。
報酬は前金で100万ゴルド、成功報酬として100万ゴルドの合計200万ゴルドを支払います。
なお遺跡で発見した道具や武器に関しては、すべて発見者に権利が帰属されることもお伝えしておきます。
期限は本日から20日以内です。いかがでしょうか?』
ソーマジック・サーガでも遺跡の調査クエストはいくつかあった。もし内容が同じであれば、幻のアイテムが手に入る可能性がある。これは非常に美味しい話だ。
「その調査依頼はウチだけか?他にも声をかけているのか?」
『現時点では皆様だけです。ただし時間がかかるようであれば、他のパーティーを探す場合もあるでしょう』
「なるほどな。俺はこの話を受けたい。みんなはどう思う?」
「私は反対。早くレベルを上げたいのに、余計な寄り道はしたくない。宿で少し休んだら、すぐにレベル上げに向かいたいから」
「私はサトルさんの判断に従います」
「俺はどっちでもいいが、サトルが受けたいと判断したということは、何か理由があるんだろ?」
「そうだ。この遺跡調査イベントは完全なイレギュラーだと思うが、おそらくその遺跡はアイテムの宝庫。
もしかしたら、ソーマジック・サーガでもレアだった貴重なアイテムが手に入るかもしれない。
もしそれを手に入れることができれば、これからのレベル上げにかなりプラスになるはず。
長い目で見れば、このクエストは参加すべきだと思う」
「今後のレベル上げにプラスになるの?」
「おそらく…。絶対とは言えないが、かなり重要なアイテムだ」
「サトルがそこまで言うなら、私も賛成するわ。急がば回れとも言うしね」
「オッケー。では満場一致でクエストを受けることにする」
『ありがとうございます。それでは詳細をお伝えしましょう』
レベル上げの最中に突如舞い降りた遺跡の調査クエスト。このサトルの決断が吉と出るか凶と出るか、この時点では誰もが楽観的であった。
「想定外の悪夢」へつづく
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