#3 赤の勇者 【3-21】
「ダメだ、よ……ディアス」
エミリアの声。
エミリアはディアスの裾を掴んで。
「ディアスは魔王なんかじゃないもん。魔人かどうかなんて関係な、い。あなたは、あた……ひを助けてくれた。他にも……今までたくさんの、人を救ってきたことは変わらなひ。だから…………」
「…………」
ディアスは引き抜きかけた剣を納めると、肩越しにエミリアに問う。
「俺を信じるか、エミリア」
エミリアはうなずいた。
「ならアムドゥスと契約してくれ」
ディアスはエミリアに振り返った。
その顔に柔らかな笑みを浮かべて。
「大丈夫だ、エミリア。俺を信じろ。この場を切り抜けて、アーシュ達を助けに行こう」
「この場を切り抜けて? まさか俺達に勝てるつもりか?」
巨漢の男が言った。
「エミリア」
ディアスがエミリアを呼ぶ。
「わかっ、た。……アムドゥス」
エミリアはディアスに応えた。
エミリアはアムドゥスを呼ぶとアムドゥスと契約を行う。
ディアスはそれを見届けると
その剣を構えて。
「アムドゥス」
ディアスが呼ぶとアムドゥスは飛び上がった。
その肩へととまる。
「ソードアーツ────」
「はっ。きやがれ。返り討ちにしてやるよ」
巨漢の男は武具の手甲の魔力を解放して。
その拳から膨大な魔力が噴出。
男はその推進力を得ると跳び上がった。
「『
ディアスは純白の刃を振るった。
ディアスは剣を操作し、その刃の切っ先を自身に向けて。
放たれた白い剣閃がディアスの胸をすり抜け、その胸の奥にある
白の軌跡が
膨大な魔力の消失を補うためにディアスの身体を自食の刃が侵食する。
瞬く間に自食が進行。
だが放たれた剣閃はそれよりも早く魔力を奪い、その力を封じ込める。
ディアスの欠損した身体を補完していた自食の刃が砂となって崩れていく。
「アムドゥス……!」
「ケケ、先に言えよバカ野郎!」
アムドゥスはその姿を瞬く間に変えて。
真っ黒な影のようになるとディアスの身体を覆った。
自食の刃が消えた箇所をアムドゥスが補う。
それと同時に巨漢の男がディアスの直上から魔力の噴出をもって急降下。
「ソードアーツ『
迫り来る一撃。
それを見据えるディアスの目から赤の輝きが消えて。
────だが、その瞳は光を失ってはいなかった。
スキルツリーを侵していた干渉が消え、ディアスはその力を取り戻す。
ギリっと歯ぎしりの音。
そして振り絞るようにディアスは叫ぶ。
「『
ディアスに
輝く剣はディアスの周囲を高速旋回し、男の放ったソードアーツを受け止める。
「馬鹿な!? 俺のソードアーツを受け止めただと?!」
巨漢の男は驚きの声を漏らした。
そしてディアスの操る刃は周囲の魔宮を斬り裂き、削り、それらを魔力に変換して吸収する。
ディアスは魔力を蓄えた剣を手に取って。
「ソードアーツ『
両手で振り下ろした剣から放たれる紅蓮の一閃。
そしてディアスは剣を持ち変えると続けざまにソードアーツを放つ。
「
炎の剣閃と交差するように暗黒の閃きが走る。
ディアスは剣を手放すと別な2本の剣を手に取った。
「ハッハッハッ!」
その姿を見たフリードは笑い声をあげた。
「思い出したぜ、その名前、その剣技、そのソードアーツ! お前、白の勇者か!」
フリードは剣を手に取った。
鞘を
「サポートと援護任せた! あれはヤバい!」
フリードは歯牙を剥き出しにして笑いながら、栗色の髪の女性と老婆に言った。
「スペルアーツ『
すかさず栗色の髪の女性は次々にスペルアーツによる補助を付加。
「サモンアーツ『
老婆は杖に埋め込まれた
杖がその魔力をさらに増幅し、
現れたのは白い炎を纏った巨大な竜。
炎熱系ダンジョンの最高位の魔物の一体であるその竜は黄金の瞳でディアスを睨んだ。
白銀のように燃える剥き出しの心臓が膨大な炎を生み出して。
白炎の竜はディアスに向けて灼熱の炎を放った。
バフを幾重にも付加されたフリードも剣を振りかざして
ディアスはその姿を横目見て。
続けざまにソードアーツを放って巨漢の男を後方に弾き飛ばすと、
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