第4話 冒険者ギルドにて
「この街は坂が多いな」
「だからそう言ったろ」
横で歩くテレーザが文句を言う。俺は忠告したんだがな。
あの出会った日から2日目。
今日は冒険者ギルドに案内せよ、という彼女のお言葉で冒険者ギルドまで行くことになった。
この街は坂が多いから
そして、ギルドは丘を登ったところにある。石畳で舗装された緩い階段は傾斜はきつくはないが、長くて結構しんどい。
「あれに乗ればいいって言っただろうに」
「どんな場所か見たかったのだ……次からは乗る」
何となく強がりを言ってるなって感じだな。
一歩一歩、階段を上る彼女の横には先日も見た杖が付き従うように浮かんでいる。
杖は鍵をモチーフにしたような装飾が施されていた。魔法の道具らしいが、持たなくていいのは便利だな。
綺麗に晴れ渡った空。気温は少し高めでその分疲れが増す。
横をガタガタと音を立てながら黄色に塗られた
あれに乗ればもう着いていただろうに。
●
この町の冒険者ギルドは丘の上にある石造りの砦のような頑丈な建物だ。
ドアを開けるとホールに人はまばらだった。
時間は昼過ぎくらいだから、依頼を受けるにしても報酬の清算をするにも中途半端な時間だから当然だが。
テレーザがホールをきょろきょろと見回す。
「どうした?」
「登録をしたい。受け付けは何処だ?」
「ちょっと待て。お前、冒険者じゃないのか?」
「だから今から登録するのだ、一々驚くな」
そして、冒険者のほぼすべてはギルドに所属する。
冒険者ギルドは、モンスター討伐や遺跡探索、採集や護衛などの依頼をの窓口となり、かわりに依頼料から一部を運営費として受け取る。
ギルドはそのかわり報酬の支払いを確約してくれるし、実績に応じたランク付けの利便性も高い。
ごくまれにこの運営費としてとられる分を嫌ってギルドに所属しないものもいるが、報酬の受取で裏切られることもあるし、依頼主から足元を見られる。
というわけでギルドに属していない冒険者はありえない。
「本当に大丈夫なんだろうな」
確かに金払いはいいというか、こいつが手付金なる名目で払ってくれた金、例の金貨だが、あれのおかげでしばらくは生活は安泰だが。
駆け出しと討伐に出て死ぬのは嫌だ。
金で命は買えないし、棺桶の中に金貨を詰めてもらっても意味は無い。それにまだ死ねない理由もある。
「安心しろと言った」
そう言ってテレーザが窓口の方に行った。
なにやら懐から分厚い紙束を持ち出して何か話している。しばらくすると係員が奥に引っ込んで彼女に何か渡した。
「どうだ、問題ないだろう?」
彼女が自慢げに見せてくれたのは冒険者認定証だった。
●
冒険者認定証は固い革で作られたもので、ギルドが発行する冒険者ギルド所属である証明でもある。
そしてそれには名前やギルド認定ランクも刻印されている。
ランクはB2☆。
ランクは基本的にはモンスターの討伐実績とかに応じてギルドが認定する。D3から始まってあげていくわけだが、登録したてでもうB2とは。
そして、☆の表記は初めて見た。
確か、星は特別な実績や能力をギルドが認めた時に与えられる特別なランクだったと思う。
テレーザの場合は魔法学園だから☆付きでB2からスタートってことなのか。
「アレクト―ル魔法学園の生徒だからか?」
「その通りだ。私のことは
その呼び名はよくわからんが、B2は正直言って相当だ。
俺のキャリアは16歳から始まって12年目。それでA3。それが、いきなりあと二つの差に迫られるとは。ちょっとショックだ、表には出さないが。
Dから始まる冒険者ランク、Bは十分な実力がある中堅どころとみなされるレベルになる。
冒険者ランクは単に魔獣を倒していれば上がっていくものじゃなくて、冒険者ギルドの審査によって決められる。
それには当然実戦経験の長さのような、数字では測れない要素も加味される。
改めてテレーザを見た。
魔法使い然とした白い長めのローブとマントは研究室ならともかく、冒険者の目から見ると動きやすいとは言えない。
華奢な体に日焼けしてない白い肌、どう見ても養成機関を出たての駆け出しの魔法使いって感じだが。
「なんだ?」
彼女がじろりと俺を見上げる。
このどう見ても駆け出しの彼女にギルドはB2ランクを与えた……経験の無さを補うほどの突出した
アレクト―ル魔法学園か……今まで接点がなかったが、養成機関とは格が違うってことか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます