【7】地味子を誘ってもいいですか

25

 俺の腕の中で……。

 和が俺を見上げた。


 大きな瞳を潤ませて……。

 小さく息を吐きながら、俺にしがみつく。


 ふっくらとした唇に……。

 俺はゆっくりと唇を重ねた。


 まるでそれは……。

 甘い蜜のように……。


 俺の理性をもとろけさせ、夢中にさせる。


「和、好きだよ」


「聖也……私も大好き」


「和、もういいよね」 


 小さく頷いた和に、俺は再び唇を……。


 ◇


 ――ジリリリリリリ……。


「うあああああっっ!」


 けたたましい目覚ましの音で、俺は飛び起きた。


「なんだよ、いいところだったのに。夢かよ」


 蜂蜜みたいに甘いキスが全部夢だったなんて、俺も相当病んでるな。


 夢の続きを見るために、二度寝することを諦め、部屋の窓のカーテンを勢いよく開く。


 ギラギラとした夏の太陽が眩しい。


 今は八月、男どもがもっとも活気づく夏休みだ。


 朝っぱらから室内をジリジリと照りつける太陽。俺の体を干物にするつもりか。


「あちぃ……」


 俺達は今年の四月高校三年生になった。

 進級してクラス替えはあったが、ラッキーなことに和と同じクラスになった。


 俺の夢にまで登場する彼女は、俺をワンランク上の『友達』だと認定している。


 去年の六月に友達になり、すでに一年二ヶ月が経過した。


 女子と交際してもすぐに熱がさめて、別れてしまう俺が……、和とは今でも一緒にいられる。


 それは和が友達だから?

 いや、違う。


 最初から、和は俺にとって異性でしかなかった。


 『学園の王子様』と呼ばれている俺が、好きな女子といまだに友達ごっこをしている。


 なぜなら、彼女は俺よりも『勉強』が好きで、『勉強』が恋人だからだ。

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