【7】地味子を誘ってもいいですか
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俺の腕の中で……。
和が俺を見上げた。
大きな瞳を潤ませて……。
小さく息を吐きながら、俺にしがみつく。
ふっくらとした唇に……。
俺はゆっくりと唇を重ねた。
まるでそれは……。
甘い蜜のように……。
俺の理性をもとろけさせ、夢中にさせる。
「和、好きだよ」
「聖也……私も大好き」
「和、もういいよね」
小さく頷いた和に、俺は再び唇を……。
◇
――ジリリリリリリ……。
「うあああああっっ!」
けたたましい目覚ましの音で、俺は飛び起きた。
「なんだよ、いいところだったのに。夢かよ」
蜂蜜みたいに甘いキスが全部夢だったなんて、俺も相当病んでるな。
夢の続きを見るために、二度寝することを諦め、部屋の窓のカーテンを勢いよく開く。
ギラギラとした夏の太陽が眩しい。
今は八月、男どもがもっとも活気づく夏休みだ。
朝っぱらから室内をジリジリと照りつける太陽。俺の体を干物にするつもりか。
「あちぃ……」
俺達は今年の四月高校三年生になった。
進級してクラス替えはあったが、ラッキーなことに和と同じクラスになった。
俺の夢にまで登場する彼女は、俺をワンランク上の『友達』だと認定している。
去年の六月に友達になり、すでに一年二ヶ月が経過した。
女子と交際してもすぐに熱がさめて、別れてしまう俺が……、和とは今でも一緒にいられる。
それは和が友達だから?
いや、違う。
最初から、和は俺にとって異性でしかなかった。
『学園の王子様』と呼ばれている俺が、好きな女子といまだに友達ごっこをしている。
なぜなら、彼女は俺よりも『勉強』が好きで、『勉強』が恋人だからだ。
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