【5】地味子に嫌われたようです

18

 翌日、期末テストに突入した。


 昨日もカラオケやゲーセンで散々遊んだ俺。勉強は愚か、教科書を開いた時点で睡魔に襲われ、爆睡して朝を迎えた。


 一限目、英語。

 俺の得意な選択問題。


 先ずは、エンピツを転がして……。


 問1はA、問2はB、問3はCか。

 よし、絶好調だ。


 ヤバい、得意な選択問題はやり尽くしてしまった。


 長文に対する問題だ。

 長文が解読できないのだから、問題が解けるわけがない。


 知っている単語や連語をとりあえず並べるしかないな。どうせ追試なら、開き直るしかない。


 ニ時限目は数学。三時限目は歴史。

 とりあえず、全て回答欄は埋めればいいんだ。


 三科目を終えて、ヘトヘトの状態で和の机に辿り着く。


「テスト見てたら頭が痛くなった。俺はどうやら勉強アレルギーだ。和はどうだった?」


「聖也、勉強アレルギーじゃなくて、勉強不足でしょう。自分の努力不足を誤魔化さないで。私は自信あるわ」


「さすが……」


「聖也はできたの?」


「んっと、出来た、出来た。とりあえず回答欄は全部埋めたから」


「わからない問題なかったんだ。それは凄いね」


 和に褒められ内心罪悪感はあるが、回答欄を埋めたことは事実だ。選択問題に使用した鉛筆はすぐに証拠隠滅しよう。


「和、一緒に帰ろう」


「うん、いいよ」


 えっ? いいのか?

 図書館で勉強しないのか?


 久しぶりに、和と下校。

 もしかして、キスするチャンスあるかも。


 ぐははっ……。

 これで友達から彼氏に昇格だ。


 和と二人で教室を出ると、廊下にC組の北条が立っていた。どうやら誰かを待っているらしい。


「北条、誰か待ってんの?」


「光月君、一緒に帰ろう」


「はっ? 俺?」


 どうして俺なんだ?


「昨日、カラオケ楽しかったね」


 北条はめちゃめちゃ可愛い顔で、ニコッと笑った。


「カラオケ?」


 和が俺をキッと睨んだ。

 北条の一言で、全てを察したようだ。


「いや、その……。正和と恭介がC組の女子と交際してて……」


 正和と恭介に助けを求めようと、教室に視線を向けたがすでに消えている。


「北条さんと一緒に帰れば? 私は一人で帰るから。さようなら」


 和は俺に背を向けて、サッサと歩き始めた。


 『さようなら』が、永遠の別れのように、鼓膜にグワングワンと響く。


「……っ、和、待てよ! あっ、北条ごめん。またな」


「光月君……」


 俺は北条を残して、和を追いかけた。


「待てって……」


 全速力で追いつき、階段の踊り場でやっと和の腕を掴んだ。

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