某巨大掲示板 某スレッド part4
16:名無し
2018/05/01(土)02:04:01.56
中学の頃、仲良かったKって友達がいるんだ。
Kは周りから何考えてるかわからないと思われるタイプ(今で言うミステリアスな奴?)で、唯一俺とくらいしかまともに話さないような奴だった。何回か家に遊びに行ったけど、Kの家族もそんな感じで、今思うとめちゃくちゃ不気味だったw
そいつの家は歴史のある日本家屋って感じで、家の裏にデカい蔵があるんだよ。それも『開かずの蔵』。普通そんな蔵なら躾で閉じ込められるみたいなのがあったかもしれないけど、その蔵にはそういう話がないんだ。Kが言うには、「一族に伝わる貴重品があって、婆さんから絶対開けちゃダメだって言われた」って。Kは俺を呼んで、その蔵を開けようとしたんだ。
夏休みなのもあって、Kの家に泊まるのは簡単だった。ホームセンターでロープとかヘルメットとか懐中電灯とかを揃えて、遊び半分で作戦を始めたんだ。
必要なのは監視役と実行役だった。Kの家族が寝静まったのを見計らって、2人で布団を抜け出すんだ。暗い裏庭を足音を立てずに歩き、Kが蔵の裏に生えている樫の木に登っていく。どこで身につけたかわからないくらい手際良く、古くなって空いた壁の穴に滑り込んでいくんだ。
俺は携帯の通話を繋いだままにして、小声で連絡を取った。誰かが通りかかったらすぐ報告する作戦だったんだ。
俺「K、大丈夫か?」
K「埃まみれだし、カビ臭い。宝というより、ガラクタばっかりだ」
俺「じゃあなんで封印されてるんだよw」
こんなくだらない会話を続けてたとき、Kのテンションが若干上がった。怪しい壺を見つけたらしい。Kが言うには、泥をそのまま焼いたような色で、揺らすと何か個体が転がる音がする。口は和紙みたいな紙で密閉されて、ざらざらした紐で縛ってあるらしい。中学生男子が両腕で運べる大きさで、Kは息を切らして持ち上げていたらしいんだ。
K「たぶん、中に宝が入ってるんだよ。2人で開けてみようぜ?」
俺は承諾し、Kを待った。蔵が内側から施錠されているなら、自分から出てくるはずなんだ。
10分待った。Kは出てこない。寝落ちしたかと思って電話越しに声を掛けたら、困った声色で「出れなくなった。開けてくれ」って言うんだ。
俺「無理に決まってるだろ。外から開けられるなら、わざわざ壁の穴から入らなくていいじゃん」
K「……開けてくれ」
Kは何度も「開けてくれ」と呟いていた。通話越しの声がどんどん大きくなり、雑音が混じる。
心配になって、俺は蔵の大きな扉を何度も叩いた。その間にも、電話口の「開けてくれ」は繰り返し発せられ続けている。電波状況が悪いのか、その声は二重に聞こえたんだ。
「開けてくれ……あけて……あけてあけてあけてあけてあけてあけてあけてあけてあけてあけてあけてあけてあけてあけてあけてあけてあけてあけてあけてあけてあけてあけてあけてあけてあけてあけてあけてあけてあけてあけてあけてあけて」
明らかに異常だった。Kの懇願と重なるように、無機質な男の声が聞こえるんだ。ケタケタと笑うように、何度も「あけて」と繰り返している。
あける? 扉を? どちらにせよ、このままではヤバい。そんな危機感だけがあった。慌てて体当たりをしても、蔵の扉は大切なものを守るためか頑丈でびくともしない。身体の痛みを感じながら、何度も体当たりをする。開けないといけないのに。邪魔な扉のせいで。開けないと。開けるんだ。開けなければ……。
目覚めると、朝だった。俺とKは蔵の扉の前で気を失ったように倒れていて、起きたばかりのKの家族に見つかったんだ。俺とKの身体には何の傷もなくて、後々その蔵は壁の穴が埋められて厳重に施錠されたらしい。その後俺は親の都合で転校して、最近までKとの出来事はすっかり忘れていた。
ここまで話すと、俺の見た悪い夢だと笑われるかもしれない。実際、俺も最近まで悪夢の類だと思ってた。同窓会で数年ぶりにKに会うまでは。
Kは相変わらずボソボソと話すような奴で、他の同級生からも距離を置いてた。久しぶりに会った俺を見ても、怯えるような目で凝視した後に声を掛けてきたくらいだ。
結論から言うと、あの日の出来事は俺の夢でも何でもなかった。Kにも同じ記憶があり、今でもあの壺のことが忘れられないらしい。あの壺は何を隠していたのか。Kは厳重な蔵を開ける方法を、中学の頃からずっと考えていた。
「婆ちゃんが死んで、蔵の鍵は納棺の時に一緒に燃やされた。だから、俺も蔵を燃やそうと思うんだ。燃やせば、鍵は関係なくなるだろ?」
発想が飛躍している。Kはついに頭がおかしくなったのか? 冗談か真実かわからないような発言に俺が黙っていると、Kは冗談だ、と言った。
今思えば、あれは冗談でも何でもなかった。先週、何者かによってKの家が燃やされた。Kは失踪し、今はどこにいるかもわからない。
もしKが壺を持っているなら。それを手に入れるために本当に家を燃やしたなら。あいつがおかしくなった原因は俺にもあるのかもしれない。俺があの時扉を開けていれば、あいつは……。
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