好きです

ジュン

第1話

「先輩、好きな人っているんですか……」

「ああ、いるぜ。言っとくがおまえじゃないぜ」

私は失恋した。

先輩と私は同じ弓道部の部員だ。先輩は、かっこいい。だから、学校の女子の憧れだ。

「私なんかには高嶺の花なんだよなあ……」

わかってはいたが、ぽろぽろと涙がこぼれる。でも、「泣いてる場合じゃないんだ」。もうじき大会がある。私はその大会に出場する。それに集中しないといけない。

部活動中、先輩は私に言った。

「的を射てないぜ」

「すみません」

「まあ、おれも的を射ない時があるけど」

「先輩も、ですか」

「ああ。緊張した時とかな」

大会に出場した。集中した。がんばった。先輩は言った。

「的を射たぜ」

「ありがとうございます」

「二つの的を射たぜ」

「え……」

「だから、二つの的を射たぜ……」

「…………」

「弓道部部長でも的を射ない返事することってあるんだぜ。緊張した時とかな」


終わり




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

好きです ジュン @mizukubo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ