第60話 日焼け止めオイルってなんかエロいよね。

 ここは……天国ですか?


 目の前には天使の友紀さんが水着を着てこっちを見てる。

 可愛いよ。めっちゃ可愛い。

 フリフリめっちゃ可愛い。


 その言葉、口に出せれば良いのにヘタレ。


 「す、凄い似合ってます。超可愛い。」


 これが関の山だったようだ。


 そして定番、2人して固まる。


 周りは既に泳いだりはしゃいだりくつろいだり、各々楽しんでる家族やカップル達。


 監視員の声がたまに響いていた。


 「いつまで固まってるのー。いくよー。」


 千奈に急かされて我に返った。


 「あ、あそこじゃない?」

 一応有料ロイヤルシート(6000円)なんだから焦らなくても……

 そのために事前予約して購入しといたんだから。


 真理恵…三依が自分らの有料シートに向かって早歩きをする。


 千奈がサマーベッドにうつ伏せになって寝ころんだ。


 「おにいちゃん、日焼け止めクリーム塗って。」


 4歳児の氷雨ちゃんでさえ我慢してるのに真っ先にいく今年度23歳児。


 「おう、待ってろ。」


 千奈のやつ、相手が俺だから良いもののこんな際どい水着着やがって…


 布面積が少ないが妹なので何の気兼ねもなく塗っていく。


 これが他人だったら緊張して塗れないよな。


 「ひぅぅ」「ひゃぅっ」「んんっ」


 たまに漏れる千奈の声が色っぽい。

 妹なので欲情はしないが…

 気にはなる、それは仕方がない。



 「よし、終わった。」


 どうにか終わった。

 これでも千奈が小っちゃい時はおむつ替えたり一緒に風呂入ったりもしてるからな。


 「ぁ、ありがとう。おにいちゃん。」


 すると俺の前に影がもう一つ。

 「あ、あの…私もお願いします。」


 はい??

 友紀さん、それ俺にはハードル高いです。


 「お願いします。」

 むむぅ、2回も言われたらやるしかない……のか?


 「お兄ちゃん、肌面積高い私には出来たんだから問題ないでしょう。」


 妹と彼女を一緒にしないでくれ。

 触れてもないのに超緊張なんだよ。


 「あ、ハイ。俺で良ければ。」

 でもそう答えないわけにはいかなかった。

 右を見ても左をみても正面をみても、「はよ塗れ」としか取れない表情の女性人達の姿が。

 これを四面楚歌というのか。

 

 うつ伏せに寝た友紀さんの…友紀さんの…


 「ぶほあぁぁぁ」

 イメージ的には鼻血のシーンなんだけど。

 オイルが友紀さんの背中に多目にかかってしまった。


 「あぁぁ。ごめん。ちゃんと塗るから…」

 そーっと。そーっと。

 背中に両手をはわせて…


 「ひゃぅっ」


 友紀さんが声をあげるが、緊張で反応出来ない。

 背中に触れた状態で停止してしまう。


 何秒経っただろうか、どうにかして再起動に成功した。。

 その間もずっと触れてる背中から、心臓の鼓動のような振動を感じた気がする。

 

 俺は胸を押し広げ揉むように背中をぐりんぐりんと撫でまわすように塗っていく。

 背中なのに胸?胸なのに背中?みたいなボケはいらない。


 背中と肩を塗るだけなのになぜこんなに緊張するの?


 日焼けしたら大変だし、少し脇にも塗る。


 「ひゃはっ」


 悲鳴とくすぐったさとが混ざった声をあげる。


 「お兄ちゃん…なんかえろい。」



 どうにか変なところを触らないよう日焼け止めを塗る事が出来た。



 「塗り漏れはないと思うけど。」


 しかし友紀さんは悶死していた。


 くすぐったさと恥ずかしさと微妙な気持ち良さと。

 

 「おぉっとー手が滑った。」

 真理恵さんの声が聞こえたかと思ったら体当たりしてきた。


 それ、手が滑ったレベルじゃないだろ、足が滑ったレベルじゃないだろ。

 体当たりの衝撃に耐えきれずバランスを崩し、両手が……


 左手はサマーベッドの骨組み部分、右手は……


 「はうあうあぁ…」


 友紀さんの右側のおちりを包むように触れていた。

 正確には…小指は…放送できません。


 え?ラッキースケベ?

 

 これが他のラブコメならな。


 カシャカシャカシャ……何か連写の音が聞こえる。

 でも千奈も真理恵さんも霙さんもカメラを構えていない。

 勿論両家の母親も。

 当然男性陣も…


 気のせいか…?


 「へんたいへんたいへんたいだよ~おにいちゃん。」

 ばっ

 それは雪希さんの名言だよ。

 (注:ねこねこソフト「みずいろ」より片瀬雪希さんの名言の一つ。)


 「いつまで触ってるのかにゃ~ヘタレのくせに~」

 いや、あんたが押したんだろ。ダチ○ウ倶楽部のコントみたいに。


 「ごごご、ごめんなさい。」


 それからすぐに手を離そうと……

 なぜだ…

 俺の右手と友紀さんのお尻は磁石のN極とS極なのか…

 は、離れない。

 何を言ってるのかわからないと思うがありのまま起こった事を言うぜ。


 押されて倒れて手をついたら、そこにお尻があった。

 そして掴んでしまった。

 小指は…だから放送できません。

 (意識してないので、大事なとこに触れてるという認識がありません。)


 手が離れるのを拒んでいるというのか。

 決してぎっくり腰になって動かないとか、寒いギャグで身体が凍ったとかそんなんじゃねーぜ。


 もっと斬新な……素敵な感触に右手がノックアウトされただけなんだぜ。


 「ほら、越谷。」


 結城が脇から腹を抱え、友紀さんから引き離す。


 「あ、むーちゃすぐらしあす。」

 なぜ俺はスペイン語で……


 というよりそのままフライングバックジャンピング土下座を…


 「ごめんなさい。決して態とじゃないんだけど、手が離れませんでしたーーー」


 「はうあうあ~」

 友紀さんは蒸気して真っ赤となり頭くらくらとなっていた。

 

 「はらほろひれはれ~」

 


 「やれやれ、この調子じゃ孫の顔はまだまだ先になりそうね。」

 「そうですねぇ。触れるだけであんな感じでは。」

 

 両家の母親は何を考えてやがるのか。

 お互い繊細なんだよぉ


 その後友紀さんが再起動するまで膝枕をする事になった。

 流石に身体を動かすのは真理恵さんと千奈が行った。


 塗れたタオルを顔に被せて、団扇で仰ぎながら。  

  

 その間に年配組を置いて他はプールの中に入っていった。


 「くそう。あいつらめ…」


 すると友紀さんのお母さんが声を掛けてきた。


 「それで娘のお尻の触り心地はどうだった?」


 「えぇとても柔らかく、かつ弾力もあって控えめに言って最高でした。」

 ん?今なんて?


 「今度は不可抗力じゃなく、自分からいかないとね。」

 はい?この方はなんて?


 「そうねぇ。女というのは時には強引に、時にはやらしく…優しくってのに弱いのよ。」

 おい、母よ。今、なんと?

 というかやらしくってなんだよ。

 よろしくお願いしますを、やらしくお願いしますみたいに言うノリは。


 そして、実は覚醒していた友紀さんはこの様子を聞いていて、再びぷしゅーっとゆでだこになって、起動まで時間がかかりましたとさ。

 

 その間もカシャカシャカシャと連写の音が聞こえたような気がしていた。



―――――――――――――――――――――――――――


 後書きです。


 まさかのプール回、日焼けオイルだけで1話使ってしまうとは思いませんでした。


 この次はきちんとプールに入ります。

 波のプールといえば…そう、ぽ○り!

 スライダープールとか、ウォータースライダーとかじゃないのかって?

 東武動物公園には、流れるプールとウェイブプールしかないんだぜ。

 前者が1.1m、後者が1.5mなんだぜ。

 何の高さかって?床から水面までの高さです。

 

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