第52話 両家公認。プロポーズはよっと急かされてる気がする。
「結婚を前提に付き合ってください。」
そんな黄昏の賢者が話し合い手になりたいってやってる感じで言ってるのは母親。
あひーあひーって腿をバンバン叩いて笑ってるのは妹・千奈。
そしてここは越谷邸リビング。
「実家に帰らせていただきます。」
これは俺。自分のアパートに帰らせてくれ。
というか友紀さんを送らせてくれ、権現堂の土産も渡さなければならないのに。
「まーまー、待って。」
母親が呼び止めるが、父親と友紀さんは置き人形と化している。
「不束者ですが息子をよろしくお願いします。」
あんたも不束者言うんか。
と、急に真面目になるものだからタチが悪い。
「私の方からも、よろしくお願いします。」
両親揃って友紀さんに頭を下げる。
それに倣って千奈も下げる。
でも友紀さんは固まっている。
越谷家の外堀もこれで埋まってしまったよ。
さて、数分前を思い出してみようか。
☆☆☆☆☆
「なぁ、ここって。」
見覚えのある景色。
高さが違う分少しだけ違って見える景色。
「越谷家実家の到着~」
「なんでっ」
「いや、お土産あるんでしょ。色んな意味で。」
なんだその含みのある言い方は。
突然家のドアが開いた。
中から出てきたのは…
「あ、お母さん。」
お母さんと呼ばれた女性は車の中を見やり
「あらあらあらまぁまぁまぁ。」
バレたか…
「友紀さん突然でごめん。こうなったら説明、というより紹介せざるを得ない。でないと多分帰れない。
車から降りて、友紀さんと玄関へ向かう。
「中に入ってのが良いんだろうけど先に紹介しとく。結婚を前提に付き合ってる金子友紀さん。」
一礼してから
「金子友紀と申します。真人さんとは先月から正式にお付き合いさせていただいてます。」
母は友紀さんを見て
「ゆーたん?」
と辛うじて聞こえないくらいの小さい声で呟いた。
友紀さんも俺の母親を見て何かきょとんとしている。
「さーさ、外にても仕方ないし。お父さんにも挨拶しとかないと。それとお兄ちゃんが一時的にだけど帰ってきたって。」
俺達の背中を押して玄関の中へ押し込む千奈。何気に力強いんだって。
全員がリビングに集められ、友紀さんを改めて紹介する。
父親が何か感慨深そうに物思いに耽ってる。
まぁ俺には色々あったからな、結婚はおろか彼女すら出来ないと思われてもいただろうな。
そんな俺が結婚前提の女性を連れてきたんだ。思うところもあるだろう。
権現堂で買ったさくらの酒と饅頭を渡した。
「千奈に土産って言われてたからな。」
「それ以外のお土産も連れてきてくれたけどね。」
ん?あぁ。そういうことか。
友紀さんはモノじゃないけどな。
それからしばらく出会いとかを話させられた。
先日千奈に説明した事と同じ内容を。
「孫が生まれたらBBAになっちゃうのねぇ。」
自分でBBA言うな。BBAいう世代じゃないだろ。若者かっ。
そういうわけで冒頭に戻る。
☆☆☆☆☆
「こちらこそよろしくお願いします。」
深々と頭を下げる友紀さん。
「真人が見限られないようにしないとね。」
母よ、怖い事言うなよ。
「孫とキャッチボール出来るかもしれないんだなぁ。」
親父よ、気が早い。結婚して子供出来たとして野球好きかわからんぞ、抑々女の子かもしれないし。
それ以前に…えっち出来るのか?あぁいや変な意味でなく。
童貞の力を舐めるなよっ
テク以前にムードってなんだ?若さってなんだ?振り向かないことか?愛ってなんだ?ためらわない事か?
「祝杯じゃー」
おい、千奈酒は…って成人してたか。
「友紀さんの家にも権現堂土産持っていかないといけないからさ。」
俺は申し訳ないけど祝杯を遮った。
そうすると、もう少しゆっくりしていけばいいのにと言われたけれど。
「今後はこっちにも顔出すようにするから。」
本当だよ、同じ区画に住んでるのに。
千奈にそう言われてしまった。
全員で玄関まで見送りにきてくれた。
「じゃぁまた。本当にたまには寄るようにするからさ。」
「本日はこれで失礼します。」
これからもよろしくお願いしますと友紀さんは言った。
2人を見送った後、母親は呟いていた。
「う~ん、あの左目下の小さなほくろ…」
家に戻ると屋根裏部屋にある昔のアルバムを探しにいった。
☆☆☆
天草家に持っていく分は自宅アパートに置いていく。
「じゃぁ友紀さんの実家に届けに行きますか。」
「そうですね。真人さんの両親に会った事も言っておかないと。」
俺の痛車じゃない方の車で友紀さんの実家へ向かう。
痛車の方にはシートが掛けられてある。
奇異な目で見られるのも嫌だけれど、日光や雨に晒されて汚されるのが嫌という理由。
友紀さん姉妹は良いけれど、ご両親には見せられないよ。
あっという間に金子邸へ到着。
したのは良いけれど車どうしようと思ったら霙さんが出てきて、家の敷地内の駐車場が空いてるから止めて良いよとの事。
くそうやっぱり大家じゃん。
「改めてこんばんは。権現堂のお土産持ってきました。」
「お土産話も期待してますよ。」
と言われてしまった。
「失礼します。」
おじゃましますという年齢じゃないよね。
「あらまぁいらっしゃい旦那様。」
マテ、友紀さんのお母さん。
「ほら、ゆーたんもこっち来て。」
ん?ゆーたん?
「もうお母さん、もうそういう年じゃないから…」
友紀さんは恥ずかしがっている。
「いやね、昔のアルバム見てたら懐かしくて。そういや昔はゆーたんて呼ばれてたなぁって。」
ちらりと俺を見るお母さん。
だからその視線はなんですか?
「あ、これ権現堂のお土産です。ほぼ地元の名産を地元で消費って微妙かもしれませんが。」
米2kgとさくら酒の1リットル瓶1本と饅頭を持ち出した。
「どこへ置きましょう。ちょっと重いので。」
「あらまぁ。流石男の子ね。こちらにお願いしますね。」
案内されて酒と米を置き、饅頭は霙さんが持って行った。
最初にご先祖様の仏壇に飾るのだそうだ。
「お姉ちゃんの未来の旦那様が持ってきてくれました。どうぞお納めください。」
とか言いながら霙さんは線香をあげていた。
聞こえてますよ。
確かに結婚を前提にお付き合いしてますけども。
本当に外堀は完全に埋まってるな~
家族に嫌われるよりは良いんだけどね。
「おにーちゃーん」
どごぉっと俺の胸というかお腹にダイブという名の頭突きをかましてくる氷雨ちゃん。
実は帰り際キャラクターがプリントされた綿菓子を買ってきたのだ。
「氷雨ちゃんにはこれを。」
「わーい、ぷり○ゅあわたあめー、ままーおにいちゃんからみつがれたー」
「あらあら。お礼は言ったの?それに貢がれたって、誰に教わったのかしらねー。」
多分貴女だと思いますよ。
「おにいちゃんありあとー」
4歳児の舌っ足らずな口調て可愛いよね。
ろりこんじゃないよ?
「屋台で多分お腹いっぱいよね、ご飯は…」
「確かに今何か食べるのはきついですね。最後妹の知り合いから追加のたこ焼きも食べちゃったので。」
「お母さん、今日は無理。お茶か紅茶で…」
「そういうと思ってじゃじゃーん。自家製MAXコーヒー。貴方たちを結びつけた伝説の甘いアレ。苦節3日、再現は無理だったけどそれなりに出来たと思うわよ。」
お母さん何に力を入れてるので?
それにじゃじゃーんって。
「つまり、甘いモノを飲んで甘い話をしろというの?」
「イエス・マイ・トーテー…じゃなかった。ドーター。」
どんな間違いだよ、俺をディスってどうするのですか。
「お義母さん、それは越谷に酷ですよ。」
結城が出てきてフォローにならないフォローをしてきた。
「あら、ゆーたんのためにとっといてくれたのかしら。ウチのゆーたんもまーくんのためにとっといたのだからおあいこだね。てへっ」
お義母さん、てへって…
それにまーくんって……俺の幼少期のあだなじゃん。
それに何故か友紀さんが反応していたような気がした。
それよりこの人、何歳なんだ?ネタというか言動が若々しいし。
「それは、秘密です。」
人差し指を唇に当て、目を瞑ってる。
あなたドラまたさんの作品に出てました?
立ったまま収集着かないのでリビングに友紀さんが案内してくれた。
友紀さん、霙さん、氷雨ちゃん、結城、ご両親と俺の7人が集まった。
お義母さんが作った自家製MAXコーヒーと氷雨ちゃんにはオレンジジュースが並べられ、今日の権現堂の話が始まった。
「あらぁ。今日は真人さんの膝枕…ゆーたんどうだった?」
「もーお母さんはからかわないで。……気持ち良かった。」
もうゆーたん呼びは突っ込まないようだ。
そして俺もいつの間にか表記がお母さんからお義母さんに変わっていた。
それからも色々からかわれながら話は進んでいく。
そんな中、ついにはウチの両親にも顔出し挨拶を済ませた事を伝えた。
「もうこれで両家公認ね。あとは…」
チラっと俺に目線を向ける全員。何故か氷雨ちゃんまで。
「あ、ハイ。」
ナニが良いたいのか、大人は理解していた。
正式にプロポーズしなさいと言われている気がした。
「あ、そうだ。友紀の昔の写真見る?」
有無を言わさずアルバムを取りに行ってますけどね。
そのアルバムを開いた時、全てのピースが繋がる。
―――――――――――――――――――――――――――
後書きです。
これで両家公認の仲になりました。
そしてアルバムには何が映っていたのでしょうね。
まぁすぐ次話で明らかになりますけど。
伏線はすぐ回収。理由は年齢のせいで忘れるから。
10話以上前の伏線は回収忘れるよ。特にプロットにない事やってるものは。
この話を書いてる途中、行き詰って新作を3話程投入しました。
エロエロです。注意が来たら新作はノクターン行きかな。
あっちだと自重せずエロくいけますけどね。
MAXと復讐の間くらいの立ち位置の作品だとは思ってます。
なるべく3人称で書くつもりです。よろしければどうぞ。
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