第7話 自己満足の結果
狭い廊下にわらわらと自動警備兵が出てきます。・・・あれ?もしかして50体以上いませんか?
「ユーフィア。多すぎないか?」
「私がいない間に増えたみたいです。」
あまり時間をかけると軍が駆けつけてきますよね。
「自動警備兵の集団上空に爆発物を投下します。その後は撃ち漏らしたモノを壊してください。軍が動く前に終わらせましょう。」
「わかった。」
クストのその言葉を聞いて、私は暴散する爆薬の魔術式を描いた魔石を自動警備兵の上空に転移させた。そして、炎の矢を放ち魔石を爆発させると、爆発した魔石は分裂しながら自動警備兵を貫いていきました。
煙が晴れぬ間にクストが動きだし自動警備兵を切って行きます。流石ですね。私の目には見えませんが、自動警備兵が次々に倒れていきます。クストの動きに付いていけないのか、あらぬ方向に攻撃を放つモノもいます。この分だと軍が到着する前に決着がつきそうですね。
ドンという突き上げるような振動がいきなり襲ってきました。一瞬地震かと思いましたが、この世界にきて地震にあったことはありません。
「何でしょう。この地響き、未だに続いています。」
「ユーフィア!窓の外を見ろ、あれはどこだ!」
窓の外ですか・・・・あ、あれはなんですか。炎が、炎の渦が、天を貫いています。
「な、なんですか。あれは。」
「ユーフィア。どこだ、もしかしてコートドラン商会があるところか!」
コートドラン商会?あの方向は確かに
「はい、コートドラン商会がある方向だと思われます。」
「あの、問題児やりやがった。ユーフィア、直ぐに向かうぞ。」
そう言いながら、クストは最後の一体を倒していきました。え、あの少女の仕業ですか。
「わかりました転移しますので、こちらに来てください。」
クストがこちらに来たところで
「『転移』」
転移をコートドラン商会の店の前にしてみれば一面火の海でした。これはどうしたらいいのでしょう。あの少女と蛇人の人は無事でしょうか。
「ユーフィア、あっちの方角が騒がしい行くぞ。」
クストに抱えられ騒がしい一角へ向かいます。そこで、見た光景は黒いドレスを着た少女が大人の兵士を相手にして戦っていました。人ってあんなに高く飛んで行くのですね。よく見ると少女の足元には死屍累々の兵士の死体が・・・生きてはいるようです。
「団長。団長。」
声がする方向を見ますと、少女に付いて行った蛇人の人が物陰に隠れていました。
「おい。これはどういうことだ。」
「やばいっす。マジ。やばいっす。原因はこれですよ。」
そう言って、蛇人の人は腕に抱えている人物を見せてくれました。とても美しい少女です。
「ルークは無事だったか。」
ルーク?ということは少女の弟ですか。なんだか将来が不安になるほど美少年です。
「無事じゃないっす。転移して見つけた状態があまりにも酷くて、お嬢ちゃんが治癒で治したあと、怒り狂ってこの状態です。」
「監視員の意味ないじゃないか。」
「無理っす。じゃ、団長は勇者が怒り狂っていたらどおっすか?」
「それはもう、尻尾巻いて逃げる。」
「そおっすよね。」
え?そこって勇者と少女を同等に扱うところ?
「ここは集合場所ではないはずですが?」
「「うぉ!」」
先程まで話題の人物である少女から話かけられ、クストと蛇人の人がビクリと驚きました。
「おお、さっきまで兵士を相手にしていたんじゃないのか?」
「終わりました。」
先程まで少女が兵士の相手をしていたところをみますと、人が積み重っており、うめきながら蠢いていました。
「あれは、生きているのですか。」
「彼らは生きていますよ。自分の仕事をこなしただけですから、ただ、ブタには逃げられてしまいましたけどね。」
彼らは?ということは生きていない人もいるのですか?豚?あ、コートドラン商会の会長ですか。
「次の兵士が来る前にさっさと帰りましょう。」
そうですね。
「それでは帰りましょう。『転移』」
そして、私はマルス帝国を後にしました。私の行動によって何が変わるかといえば、根本的な解決にはなっていないでしょう。所詮、自己満足です。しかし、マルス帝国に向かうことができたことで、何かが変わったような気がしました。
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