7話 結婚式は?

 ナヴァル公爵家に来て3日がたちました。

 アパートメントを引き払い連れてこられたのが、中央地区の第1層だったのです。


 ここ、メイルーンは城郭都市の様相をなしており、5つの地区に別れています。

 南には住宅地区、主に平民達が住む住宅があり。東には産業地区、主に技術者が集まっています。北は貴族専用の商業地区 、この地区に学園もあるのです。西には一般の商業地区、冒険者ギルド、商業者ギルドはこちらは側にあるますね。

 最後に中央地区は小高い丘の上にあり、貴族の屋敷、王城、時刻を知らせている教会もここにあります。


 ナヴァル家は公爵の爵位をいただいているので、もちろん、中央地区の第1層に屋敷を構えることができるのです。


 そして、この3日間、クストさんが離れません。この屋敷に来たときはもちろんのこと、私の作業場が欲しいと言えば、どの部屋がいいか確認して欲しいとナヴァル家の侍女に屋敷の中を案内されたときもベッタリくっつき。


 食事の時など膝の上に座るよう言われたので、それは流石に断りました。しかし、その後でお茶席で隣に座り、ウジウジしだし『番が膝に乗ってくれないなんて』といじけ始めました。周りの家人も可哀想な目を向けてくるのです。

 それ普通じゃないでしょ。え?番としては普通なの?ありえない。思わず頭を抱えてしまいました。


 その姿を見たクストさんが『医者、医者を呼べと叫んでいましたが』私はあなたの方を見てもらったほうがいいと思います。私の周りに番の人たちがいなかったために衝撃的なことばかりでした。


 2日目には私の侍女になってくれたマリアの説得を受けお茶席のみ膝上に座ることになりました。そのときのクストさんの喜びようはすごかったです。尻尾が取れそうなぐらい振られ、お茶を用意されているバルコニーのところまで横抱きで移動され、そのまま膝上に座らせられました。これは、とても恥ずかしいです。


 そして、口元に一口大のマフィンを持ってこられました。私が食べるのですか?食べなきゃいけないのですか?

 またしても『番が食べてくれない。』とウジウジが始まりました。マリアが『それは番の餌付け行為です。』と耳元で教えてくれます。

えづけ?餌付け!衝撃的な言葉です。そんなことまでしなければならないのですか。


 そして、3日目のお茶席でのこと。


「ユーフィアはどんな式がいい?」


「なんのシキですか?」


「それはもちろん俺とユーフィアの結婚式だ。」


 ケッコンシキ・・・結婚式!結婚式なんていい思い出なんて一つもない。また、あのような結婚式をするの?


「・・・結婚式はしなくていいです。」


「え。なんでだ?俺とユーフィアの結婚式だぞ。みんなが俺達の幸せを祝ってくれるし、美人なユーフィアが着飾った姿を自慢したいから、どんな感じがいい?」


 ミンナが幸せを祝ってくれる?神父と立会人しか居らず、家族が来ることを拒否された結婚式がミンナシアワセを祝ってくれる?


「ユーフィア、ユーフィアどうかしたか?」


 クストさんが私の顔を覗き込んできた。私のシアワセってなんだろう。


「少し一人にしてください。」



クストside

 結婚式の話をした瞬間ユーフィアの表情が抜け落ちたように見えた。その後一人にして欲しいと言って出ていってしまった。何かいけないこと言ってしまったのだろうか。確かに番として共感できなユーフィアにはなれない行動を押し付けてしまったのは自覚している。

 何がいけなかったのだろうか。


「団長、何を落ち込んでいるのですか?早速ユーフィアさんに嫌われましたか?」


 従兄弟のルジオーネが本邸に顔を出すなんて珍しい。


「なんだ、仕事はいいのか。」


「手のかかる団長がいないので、何かとスムーズに事が運びましていつもより仕事が、はかどりました。これにサインをお願いします。」


「団長職がいいなら何時でも代わってやるぞ。」


「ご冗談をあの暴力ゴリラから予算を勝ち取って来るのは団長にお願いしないと、私では無理です。」


 あの、統括副師団長から毎年の予算を勝ち取るのに何故か毎回戦わなければならないのがわからない。

 渡された書類にサインをしていくと一番最後は誰かの経歴のようだ。


「これは・・・。」


「それはユーフィアさんの経歴です。マルス帝国の諜報員に送ってもらいましたが、凄まじい経歴です。一師団の団長なんて霞んでしまいますよね。」


 凄まじいという言葉では済まされない。ここ数年マルス帝国で開発された魔道具はすべてユーフィアが作り出したと言っていいほどだ。あの討伐隊で使われていたマルスの魔武器は凄まじい威力だったと記憶に新しい。そして


「おい、ロベルト・ウォルスって誰だ?」


「読んでくださいよ。ちゃんとそこに書いてあるじゃないですか。元夫って、あ・・・聞いていない。」

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