5話 怖い怖い怖い

 王都メイルーンの東地区に技術者ギルドがありそこに登録しましたが、借りたアパートメントから外にでるのが怖くて引きこもりを続けて2週間、その間今まで作れなかった物を作り続けていました。


 例えば懐中時計、この世界は時刻を知ることができるのは教会の鐘のみ、それも一日12刻しかないのです。なのでこの世界の人にも受け入れられるように、12針で一日一周する懐中時計を作りました。


 後は書く度インクに浸けなければいけなかったペンをクズ魔石でカートリッジ式の万年筆にしたり、そういう生活に役立つものを作っていった。

 もう、人を苦しめるモノは作りたくなかった。


 しかし、作り続けるだけで、技術者ギルドに足を向けることができなかったのです。私が作ったことがサウザール公爵の耳に入ればどうなることになるか恐怖でしかなかった。


 そろそろ部屋を片付けなければいけないなと思っていたら、コンコンコンコンっと部屋の扉をノックする音が聞こえてきました。ここに知り合いがいるわけではなので訪ねてくる人なんていないはず。

 まさか、サウザール公爵家にバレた!どうする。反対側の窓から逃げるしかない。


 ドンドンドンドン


 叩く音が大きくなってきました。何これ、怖すぎる。

 取り合えず、作業場はそのまま亜空間収納の中に詰め込み。

 魔石を練り混んだ魔剣化した剣を腰に下げ、防御力・身体能力特化の腕輪を付け。恐怖心を抑える為に、精神異常耐性の腕輪。思考能力補助と広範囲の視野を確保するためのゴーグルを付ける。

 その間も扉を叩き続けられていた。


 外から「団長それ怖過ぎて出てこれないんじゃないんですか」と聞こえてきますが、全くもってそのとおりです。ってダンチョウって軍が動いている?ヤバイヤバイ。早く逃げないと。


 扉とは反対側の窓を開け足をかける。ここは三階なので流石に地面に降りるのは危険過ぎますね。

 隣の屋根に移り猛ダッシュ。後ろから「逃げた」と言う声が聞こえましたが、無視です。街の外にさえでれば、スクーターを出せる。

 屋根の上を走りながら東門へ向かって行きます。王都メイルーンから出ていくためです。



 恐ろしい、いったい何人に追いかけられているの?ここが獣人の国だというのをすっかり忘れていた。生まれ育ったマルス帝国は人族しかいなかったから、獣人がいることは知っていたけど、身体能力の高さを侮っていた。


 下の路地を数人の獣人が追いかけてきていたので、魔獣用の捕獲網で足止めをしようしたら、引っかかたのが二人。後は避けられてしまった。魔獣の捕獲に失敗したことがない私が失敗したのです。

 それにしても東門からドンドン離れて行ってしまう。どこかで方向転換をしたいけど、どうすればいい。


 そんな事を考えていたら、横を並走してきた黒髪の獣人がいた。思わず散弾銃を取り出しぶっぱなすが外れた。まあいい。屋根の下に落ちたのだから。


 ああ。どうすればいい。どうすれば逃げ切れる。絶対捕まるわけにはいかない。結局、シーラン王国にきてもダメだった。


 考えているうちに、広い広場が眼下に映る。どこかの門の近くだ。屋根から広場に降り立ちそこから見える門に突き進む。しかし横から先程の黒髪の獣人が体当たりしてきた。もう少しなのに鬱陶しい。両手に魔剣を携える。


「待ってくれ、殺り合うつもりはないんだ」


 だったらなんで追いかけてくる。魔剣を横に一振りする。この魔剣は偶然の産物でできた空間すら斬る魔剣だ。


「うぉ」


 また、避けられた。


「これ、ヤバすぎだろ」


 いつのまにか周りを他の獣人に囲まれてしまった。


「団長、ちゃんと説明しないとわからないみたいですよ」

「え。マジ?」


 ここまで来ればスクーターで突っ切って行けるか。魔剣を一本収納し、スクーターを取り出そとした手を捕まれていた。いつのまに


「俺と結婚してください」

「……意味がわかりません」

「番だし」

「……つがい?誰が?」

「俺が」

「誰と?」

「君と」

「……」


「ほら、やっぱりわからなかったんじゃないですか。団長の行動ヤバかったですし」

「まさか、番がわからないなんて思わないじゃないか」

「時々いるみたいですよ」


 目の前の男とつがい?わたしが?いやでもこの状況はないよね。絶対ない。


「私ここを出ていきますので、さようなら」

「ちょっと待ってくれ!俺捨てられるのか?」

「拾っていませんから、放置と言う言葉になります。攻め立てられる訪問とあのように追いかけられるのは恐怖しかありませんので、番だろうと何だろうと無いです」


 男は私にすがり付き、人目も気にせず、捨てないでくれっと大声で叫ぶのであった。


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