3話 悪夢の6年
そうして、私は15歳で結婚をすることになりました。皇帝陛下から非公式な謁見を設けていただき、わざわざ、すまないとのお言葉をいただきました。それだけで、少しは心が晴れたというのに、その後が最悪でした。
サウザール公爵様からお呼びだしがあり、伺いますと『貴女の夫が命が繋がったのは私のお陰だ』と言われてしまいました。まだ夫ではありません。
「しかし、命が繋がった夫の為にもっと魔道具を提供してくれてもいいのではないのかね。」
サウザール公爵家の豪華な応接室に通され、当主のサウザール公爵様と対面をしています。
「はっきり言って、まだ、籍も入れておりませんし。夫のため、それも前線送りで生きて帰って来るかわからない相手のためと言われましても困りますわ。」
ふん。15歳のガキならチョロいと思ったのかも知れませんが、社会人経験者をナメんなよ。
「おやおや。これは手厳しいですな。」
この公爵様は要注意人物です。こっちから仕掛けなければ、相手のいいようにされてしまいます。
「では、サウザール公爵様。契約取引としませんか?あなた様と私の」
「ほう。」
「公爵様は何かお望みのモノがおありの様ですね。それでは、ウォルス侯爵家にいる間、私はその物を開発提供し商品のレシピも公開しましょう。」
「それで?」
「その、商品の売り上げの2割を私に下さいませ。」
「2割でよいのかね。」
「強欲は身を滅ぼすといいますし、それに商品の量産、販路の確保などは管轄外ですから」
「ウォルス侯爵家にいる間と条件をつけたのは何故だね。」
「先程公爵様がおっしゃりましたよね。夫が命が繋がったのは公爵様のお陰だと。では、ウォルス侯爵家から出ればその必要はなくなりますよね。その代わりその間に開発した商品のレシピはそのまま差し上げます。」
「ははは。君は夫が死ぬことが前提なのかね。案外君は酷い子だったんだね。」
「この戦争がどれぐらい続くか、分かりませんが、帰って来たとしても、夫が素直に私の伴侶としてウォルス侯爵当主を務めることができるかということが疑問に思っただけですわ。」
「ほう。」
「兄と同じような方は、女の私が優れていると、どのような行動にでるかぐらいは、わかっているつもりですよ。」
「いや、参った。今回のことがなければ、息子の嫁にと思ったぐらいだ。ウォルス侯爵家を出ることになったら、私のところにくるといい。」
「光栄でごさいますが、問題を起こしたコルバート辺境伯爵家の娘でウォルス侯爵の妻となった女をサウザール公爵家に迎え入れるなど、醜聞にしかなりませんので、お断りいたします。」
「本当に勿体ないね。この私に堂々と契約を持ち掛け、意見をいう人は稀だというのに。」
「ありがとうごさいます。」
こうして、私は作りたくもない魔道具の開発をしなければならなかった。
その二日後に結婚式をあげることになったのですが、貴族の結婚式といえば、1年をかけて準備をすることが普通ですが、直ぐに前線送りするため、このような日程になったのです。まあ、このご時世家を守るために結婚をして、戦地に赴く人が増えているようで、私の周りからは、何も言われることはありませんでした。
当日、帝都の聖堂教会で簡易的な式を挙げ、婚姻の誓約書にサインをする流れなのですが、当の本人がいつまでたっても来ないのです。
痺れを切らしたサウザール公爵家の立会人の方が、夫となるロベルト様を迎えにいけば、その夫となる人物の部下という人がこられました。なんでも誓約書にサインだけすれば問題ないだろうと本人の伝言を携えて来たのです。
結婚式をなんだと思っているのですか。
そして、私と神父と立会人と夫の部下しかいない結婚式を終え、誓約書にサインをしようとペンを握ったのですが、立会人の方にお伺いして一文を付け足してからサインを致しました。その誓約書は立会人の方が持ち、夫の部下の方と一緒に部屋を出ていかれました。
その後、帝都のウォルス侯爵家に行き、家督を譲られた前ウォルス侯爵様に挨拶し、夫となるものが帰って来るかと、その夜待っていたのですが、帰ってきませんでした。
翌朝、戦地に赴くからと言って、前ウォルス侯爵様に挨拶に帰って来ました夫となるロベルト様に挨拶をしたのですが『ああ。』という返事だけで、終わりました。
ロベルト様が戦地に赴いた後は本当に忙しく、なれない侯爵夫人を演じ、執務をこなし、サウザール公爵様に言われた商品開発。
お茶会?今そんなことしている場合じゃないでしょ。
領地の収穫が減ってきている?どこかで横流ししているんじゃないの?
オークションの品物をよく見せる冊子?写真を添付しなさいな。え?動くの?動画を冊子に添付すればいいんじゃない?
相手の行動の制限をするもの?何に使うの?ど、奴隷?契約要項も付随させるの?それ必要?はい作ります。
治らない病気を作り出す?それは専門外なんだけど、バイオテロはダメです。個人指定?作りたくないんだけど。・・・・はい・・作ります。使用したらこの薬使ってください。絶対ですよ。
この国は腐ってました。サウザール公爵家は奴隷商の元締めだったのです。私が作らされていた魔道具は全て奴隷に使われるものでした。
もう。この国から出ていこうかと思っていた矢先、魔王が倒され、夫ロベルト様が帰ってきたのでした。
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