二度目の邂逅

「よう、久しぶり、サキちゃん」


 京一は手を軽く上げて笑った。


「京兄ちゃん、どうしたのその足……」


 ギプスのはめられている左足に目がいく。


「ああ、一学期の終業式の日、大型トラックに撥ねられたんだ」


「えー!?」


「ああ、キミがあの交通事故の……確か、六年三組の神辺くんだよね? もう大丈夫なのかい?」


 若林は心配そうに彼の左足を見た。


「はい、手術も無事に成功しました。まだしばらくギプスは取れませんから、たまにこうやって歩いて、右足を鍛えているんです。今日は、診察で来ました」


「そうか。大変だろうけど、頑張ってな」


 若林は京一の肩を軽く叩いて励ました。


「はい、ありがとうございます。ばいばい、サキちゃん、お兄ちゃんによろしくね! それでは、失礼します」


 京一は咲子に別れを告げると、若林達に会釈した。そして一般病棟の方へゆっくりと歩いていった。


「うん。バイバーイ!」


 咲子は手を振りながら、京一の後姿を見送った。


「ちょっと今の何よー。なんかいい感じじゃなかったー?」


 りょうが咲子の脇腹辺りを肘で軽く小突いた。


「わーっ! 全然そんなことないよ~」


「眼鏡がとても似合ってましたね」


「なかなかの男前じゃないか、え? 石川?」


「先生まで!」


 咲子の顔はみるみる赤くなっていく。


 皆で咲子をからかって笑った、たったひとりを除いて。


「大丈夫ですか? 顔色が悪いですよ。良かったらキャンディーでも舐めますか?」


「え? あっ、うん大丈夫……いや、いらないから」


 ポケットから何か取り出そうとする岡本を制止しながら、二瑠は何故だか先程の松葉杖の少年、京一のことが気になっていた。

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